自己破産のデメリットについて、よくある誤解と本当に発生する影響についてまとめました。自己破産をすると一定期間、新たな借金はできなくなりますが、人権に制限はなく、同居の家族以外にバレることもほとんどありません。自己破産をした場合の影響範囲と、自己破産をするとその後の生活はどう変わるのかについて解説します。
目次
自己破産のデメリットを項目ごとに解説
【1】破産手続き後、一定期間は新たな借り入れができない
破産手続きをすると、一定期間、信用情報機関という個人のお金の貸し借りについて記録する機関に自己破産の情報が残り、その間は新たな借り入れが難しくなります。これを俗にブラックリストと呼んでいます。
ブラックリストに入ると、住宅ローンや車のローンの新規借り入れはもちろん、クレジットカードの利用や作成、スマートフォンなどの分割払いによる購入もできなくなります。
事故情報として登録されるのは免責が確定してから概ね5年ほどで、この期間が過ぎれば自己破産の記録は削除され、また新たな借り入れや、クレジットカードの作成ができるようになります。
不便なようですが、自己破産前に借金に頼る生活を送っていた場合は、借金をしない生活スタイルを取り戻すきっかけにもなるため、人生のリスタートを切りやすくなります。
【2】20万円以上の財産と99万円以上の現金及び預金は原則として債権者に配当される
自己破産手続きを行うと一定額以上の財産は破産管財人によって換価され債権者に配当されます。マイホームなどの不動産はもちろん、一定額以上の価値のある品物や、財産価値の高い車、生命保険、預貯金などは手放すことになります。
しかし、生活に必要な家財道具などは残りますし、車も長年乗っていて、中古車としての価値が20万円以下であれば、手元に残すことができます。
【3】連帯保証人に迷惑がかかる
借金に連帯保証人がいた場合は、自己破産をすると借金の請求が連帯保証人のほうに行ってしまいます。連帯保証人が借金を支払えない場合は、自己破産や他の債務整理を検討することになります。
連帯保証人は通常、個人的なつながりのある人がなるので、迷惑をかけることを後ろめたく感じる人も多いことでしょう。自己破産手続き前にあらかじめ相談して謝罪し、了解を得ておくことが大切です。
【4】官報に掲載される
自己破産手続きを行うと、破産した旨と住所・氏名が官報に載ってしまいます。官報は行政機関の休日以外は毎日発行されており、情報量も膨大なため、通常は官報に載ることで友人・知人に自己破産が知られてしまうなどの不利益は起こりません。
また、以前は破産者の情報をわかりやすく表示するサイトなども存在していたのですが、破産者の名誉やプライバシー保護の観点から、国が破産者情報サイトを違法とする見解を発表しております。そのため、インターネットで官報の破産者情報が拡散され、知り合いに発覚する可能性は低くなっています。
ただし、官報記載の情報から、闇金業者がダイレクトメールなどで融資の勧誘を行ってくることがありますので、誘いに乗らないように注意しましょう。
【5】破産手続き中は一定の職業に就けない
破産手続きを行っている間、就くことができない職業があります。警備員、保険の外交員、宅地建物取引士、弁護士や司法書士などの他にも様々な業種で資格制限があります。資格制限に該当するのか、該当する場合の対策等は弁護士に相談しましょう。
破産手続きには半年~1年ほどかかるので、該当する職業の人にとっては影響があります。破産手続き中に就けない仕事や資格は様々ありますので、ご自身の仕事や資格について、破産手続き前にあらかじめ確認されることをお勧めします。
破産手続きが完了すれば、また以前のように仕事に就くことができます。
よく勘違いされている自己破産のデメリットの誤解を項目ごとに解説
【誤解1】必ず勤め先にバレてクビになる
自己破産をしたことが勤務先に知られてしまうことは限られたケースのみ。例外的にわかってしまうケースが3つあります。
(1)勤め先から借金をしていた場合
→勤め先も債権者として手続きに参加することになるため、必ず発覚します。
(2)勤め先の役員だった場合
一定期間資格を使うことができなくなることから会社にわかってしまう可能性が高いといえます。
(3)官報をみられた場合
官報は誰でも見ることができます。しかし,一般的には見る機会が少ないと思いますので可能性としては低いといえるでしょう。
これらのケースに当てはまらなければ、会社に発覚するリスクは低いです。また、万が一会社に知られたとしても、自己破産をしたことは解雇の正当事由にはなりませんから、会社はクビにすることはできません。もしも自己破産を理由に会社をクビにされてしまったら、不当解雇として争うことができますから、自己破産手続きを依頼した弁護士に相談してみましょう。
また、転職する際にも、破産したことを新たな勤め先に申告する必要もありません。
【誤解2】必ず知人や家族にバレる
自己破産をすると官報に住所氏名が載りますが、官報を日ごろからチェックしている一般人はほとんどいないため、官報掲載をきっかけに友人や知人にわかってしまう可能性は極めて低いです。
友人・知人が職業的に官報をチェックしていたり、金融業などで信用情報を取り扱う仕事であっても、仕事で知った情報をみだりに言いふらすのは守秘義務や個人情報保護法に違反しますので、ここから周囲に広がる可能性は非常に低いといえます。
家族についても、同居していない親や親族にバレる可能性はほとんどありません。
同居している家族については、手続き書類の作成や財産の処分などにより、バレてしまう可能性があります。自己破産の効力は本人にだけ及び、家族には直接の影響はありませんが、家や車が無くなれば生活スタイルの変更を余儀なくされます。同居の家族には、事前に自己破産する旨を相談し、人生のリスタートに協力してもらいましょう。
【誤解3】配偶者や家族もお金の借り入れやクレジットカード作成ができなくなる
自己破産の効力は破産者本人にだけ発生し、家族や配偶者には及びません。信用情報機関のブラックリストに記録されるのも本人の情報だけで、家族の情報が関連付けられて記録されることはありません。自分が借金ができなくなっても、家族まで借金やクレジットカード、分割払いができなくなることはないので安心してください。
ただし、家族が借金の連帯保証人になっていたり、マイホームを夫婦の共有で持っていたりした場合は影響があります。
【誤解4】自己破産すると戸籍や住民票に載る
自己破産をしても、そのことが戸籍に記載されることはありません。本籍地の市町村役場には「破産者名簿」というリストがありますが、免責を受けられなかったなどごく一部の破産者しか掲載されないうえに、外部には公開されない名簿ですので、ここから破産の事実が発覚することはありません。
破産者名簿とは、弁護士などの士業や、成年後見人など、「破産者ではないこと」の証明が必要な人たちのために、身分証明書を発行するためのリストです。行政機関が破産者のことを把握して人権を制限するためのリストではないので安心してください。
【誤解5】破産すると選挙権が無くなる
破産によって選挙権などの基本的人権がはく奪されてしまうことはありません。前出のように、行政機関は人権を制限するために破産者名簿を作成しているわけではないため、選挙になれば通常通りに投票に行くことができます。
【誤解6】年金や生活保護が受けられなくなる
破産しても、年金や生活保護が受けられなくなることはありません。破産は借金で苦しい人生をやり直すための手続きであり、生きていくための手続きですから、最低限の生活保障を奪うような仕組みにはなっていません。
【誤解7】破産したら賃貸住宅から退去させられる
破産しても賃貸住宅から立ち退く必要はありません。かつては、破産すると貸主は賃貸契約を解除できるというルールがありましたが、破産者の生活基盤を守るために平成17年の法改正により、破産を理由に解除はできないよう変更されました。
【誤解8】引っ越しや海外旅行ができなくなる
同時廃止事件になった場合は特に制限はありませんが、管財事件になった場合には出張や旅行など長期間居住地を離れる場合裁判所の許可が必要になります。破産手続きが終了れば制限はなくなりますで、制限の期間としては数か月程度になります。
自己破産すると制限されてしまうこと
職業制限や移動の自由の制限など、自己破産に伴うデメリットの多くは、破産手続きが完了すれば無くなります。破産手続きは半年~1年程度で終わるのでそれほど長くは続きません。しかし、信用情報機関にブラックリスト入りすることにより、破産手続き完了後も一定期間、日常生活に制限がかかることがあります。以下にご紹介します。
【1】クレジットカードによるショッピング
オンラインショッピングでは、クレジットカード払いしか決済方法がないケースがあるので、困ることがあります。デビットカードであれば、クレジットカードのように使え、お金の貸し借りがないので審査もありません。カードが必要な場合は、デビットカードを作成されると良いでしょう。
【2】携帯電話の分割払い購入
携帯電話の契約では、端末の分割払い購入と月々の料金支払いがセットになっているものがあります。こうした契約の場合、自己破産後には契約ができなくなります。しかし、一括払いでの購入は可能ですので、契約方法を選んで購入すれば問題ありません。
【3】家族の借金の連帯保証人になれない
子どもがあり、奨学金制度を利用する場合でも、親が自己破産をしていると、連帯保証人になることができません。このような場合でも、連帯保証人の代わりに保証機関が連帯保証を行う「機関保証」という制度を利用することにより、奨学金を受け取ることができます。
自己破産しても無くならない要素
自己破産をしても、税金や健康保険料、公的年金と言った国や地方自治体に納めるお金について、納付義務がなくなるわけではありません。罰金も同様です。また、交通事故による損害賠償義務、子供の扶養義務に基づく債務などもなくなりません。
税金が支払えない場合、国税なら税務署、地方税ならば地方公共団体の税務担当窓口で、事情があって税金が支払えないと相談してみましょう。以下のような救済措置があります。
・延納
所得税の半分を納税し、残り半分を年度内に分割で納税する方法
・猶予
病気や怪我などやむをえない事情で納税できない場合、1年以内を期限として分割で納税する制度
このように行政に相談をせずに、税金を滞納していると、金融機関からの借金と同じように督促が来ます。これを無視していると、財産の差し押さえが行われます。
自己破産の前に検討できること
借金の負担を軽減したり、利息をカットしたりする方法は自己破産だけではありません。収入がある方であれば、任意整理や個人再生と言った、もっと影響の少ない方法で借金問題が解決できることがあります。
また、長年にわたって借金をしている場合、過払い金が発生しており、その過払い金を貸金業者から取り返すことによって、自己破産を免れられるケースもあります。
自己破産は人生の終わりではなく、新しい人生のスタートです。しかし、財産の処分や一定期間の職業制限などのデメリットも発生します。まずは、自己破産以外の方法で借金問題を解決できないか、専門家に相談されることをお勧めします。
借金問題は病気と同じで、早めに専門家に相談することで、軽いうちに解決することができます。最近では多くの法律事務所が無料にて借金問題の相談を受け付けていますので、一人で抱え込まずに問い合わせしてみてください。
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