債務整理の際、気になることの一つが、「債務整理をしたら住んでいた家はどうなるのか」ということではないでしょうか。
自己破産や個人再生をした人は、持ち屋に住んでいたのでしょうか、それとも借家だったのでしょうか?
債務整理した人の住宅事情はどうなっている?
2014年の調査によれば、同年に裁判所を通じで債務整理を行った人の持ち家割合は、自己破産をした人と、個人再生を行った人で大きく異なります。
自己破産者のうち、本人所有の家に住んでいた人は6.86%とわずかです。家族所有の家に住んでいた人は22.04%、借家など、持ち家でない住居に住んでいた人は71.10%に及びます。
個人再生の場合は、本人所有がもっとも多く、45.90%と全体の半分近くとなっています。続いて持ち家以外が33.47%、家族所有が13.28%となっています。
このようにハッキリと違いがあるのは、自己破産と個人再生という二つの制度の特色に関係しています。
自己破産の場合、持ち家に住んでいる人が少ないのはなぜ?
本人所有の家に住んでいる破産者が少ない理由としては、以下が考えられます。
・自己破産すると持ち家は手放すことになるので、家を持っている人の場合、他の債務整理が可能な場合は、なるべく他の手段をとろうとする人が多い
・自己破産する前に、金策のために既に持ち家を売却している人が多い
・もともと持ち家等の大きな財産を持っていない人は、自己破産してもデメリットが少なく、メリットが大きいため、自己破産を選択しやすい
自己破産の手続きを行い、免責が認められると、借金は帳消しになる代わり、原則として持っている財産を手放さなくてはなりません。
もっとも、すべての財産が没収されて無一文になってしまうわけではなく、「自由財産」と呼ばれる、生活に必要な最低限の財産に関しては手元にとどめ置くことができます。
自由財産とは、具体的には以下の3つです。
(1)自己破産手続き開始後に取得した財産(破産法34条1項)
(2)99万円までの現金(破産法34条3項1号)
(3)差押禁止財産(破産法34条3項2号)
差押禁止財産には、冷蔵庫・洗濯機などの生活必需品の他、1か月分の食料や燃料、職人や技術者・農林水産業等に従事している人の場合はその仕事に必要な道具等が含まれます。
漁師の人の漁具や、農業従事者の農耕具などは手放す必要はありません。
そのため、債務整理手続きの時点で持ち家がある場合は、なるべく自己破産以外の方法を選択し、持ち家がない場合は、最低限の財産が手元に残るならと、自己破産を選択するケースが多いと考えられます。
個人再生の場合、持ち家に住んでいる人が多いのはなぜ?
個人再生の手続きする人に持ち家の人が多い理由は、個人再生には「住宅ローン特則」という、ローンつきの住宅に住み続けながら、住宅ローン以外の借金を大幅に減額できる仕組みがあるからです。
そもそも個人再生手続きが誕生した背景には、「債務者の生活基盤である持ち家を守りながら、借金を減額できる制度」が望まれたことがあります。
もっとも、住宅ローンを完済している場合は、清算価値が大きくなるため個人再生を利用する意味がありませんが。不動産の価値よりも住宅ローンの残高が多い場合(オーバーローンの場合)は、マイホームに住み続けたまま借金を減額することができます。
個人再生には他のメリットもあります。たとえば車など、どうしても手放したくない高価な財産がある場合、自己破産の場合は「自由財産の拡張」が認められない限り、財産を所有し続けることは難しくなっています。
自由財産の拡張とは、たとえば重病の人や山奥に住む人で、車がなければ生活がなりたたないケースの場合、裁判所の許可により、自動車を所有し続けることを認める制度です。
個人再生の場合、車のように生活に欠かせない道具はもちろん、たとえば「先祖伝来の80万円の価値のある日本刀はどうしても手放したくない」という場合でも、借金の減額幅は少なくなりますが、守ることができる可能性があります。
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