「女性の方が男性よりも自己破産することが多い」という噂を聞きますが、これは事実なのでしょうか?
自己破産と性別との関係をひも解くと、女性ならではの自己破産をする理由が見えてきました。
「自己破産する割合は女性の方が高い」は正しくない
借金に関する噂の一つに「自己破産をする割合は男性よりも女性の方が多い」というものがあります。本当のところはどうなのでしょうか?
日本弁護士連合会が発表している公式のデータを見ると、この噂は正しいとは言えないようです。
以上のように、2014年の調査では、男性の破産者が57.74%であるところ、女性破産者は42.26%で、男性の破産者の割合が高いことが公表されています。
では、なぜこのような噂があるのでしょうか?
実は、「自己破産の割合は男性よりも女性の方が多い」は正しくありませんが、「女性は自己破産しやすい」は間違いとは言えないようです。
「女性は自己破産しやすい」は本当か
大手消費者金融のアイフルのホームページによれば、利用者の男女比は男性が70.2%、女性が29.8%となっています。同じく大手のアコムの2017年3月31日時点のデータによれば、男性が82.8%、女性が17.2%と、圧倒的に男性の利用者が多いことがわかります。
借金をしている人の割合は、男性が多いのですから、借金が苦しくなって自己破産する割合も、7~8割が男性でもおかしくないはずです。実際、債務整理でも、個人再生の手続きを行う人の割合は、男性が8割、女性が2割になっています。
しかし、自己破産の場合は、男性の割合は6割に満たず、女性の破産者は4割を超えるというデータがでています。
自己破産になると、急に女性の割合が高くなるのはなぜでしょうか?
これについては、女性の場合、男性よりも生涯を通して得られる賃金が低い傾向があり、一度借金を背負ってしまうと、支払い切れずに自己破産するケースが多いことがあります。
女性の方が収入が低い理由
国税庁の平成27年(2015年)の調査によれば、給与所得者の平均年収は男性521万円、女性276万円となっており、男女で245万円もの差があることが分かっています。これには以下のような理由が考えられます。
女性の方が非正規従業員が多い
出典・http://www.j-fsa.or.jp/doc/material/white_paper/h28/chapter3.pdf
平成28年(2016年)の統計では、正規従業員の割合は男性67.9%に対し、女性は32.1%にすぎません。非正規従業員の割合は女性が67.8%、男性は32.1%と、完全に男女比が逆転しています。
同じ仕事をしていても、正規従業員と非正規従業員では賃金に差があるため、男性より女性の方が、収入が少ない傾向があります。
育児や介護の負担が女性に偏りやすい
小さな子供を育てるため、また最近では親の介護のために、仕事を辞めたり、正社員をやめてパートやアルバイトなどの非正規雇用で働く女性が少なくありません。
「イクメン」という言葉が流行したように、以前に比べれば、男性が家事や育児、介護に協力する家庭が増えました。しかし、まだまだ「家の仕事は女性がするもの」という意識が根強いのも現実です。
また、雇用主である会社側としても、「マタニティーハラスメント」という言葉があるように、女性の正社員が出産休暇や育児休暇をとることに対し、理解がないケースも少なくありません。そのため、仕事を辞めたくないのに、妊娠をきっかけに辞めざるを得ない場合もあるようです。
今後、債務整理の男女割合はどうなっていく?
かつての日本の社会では、男性が正社員として働き、女性が専業主婦として家庭を切り盛りするのが一般的でした。しかし、今ではそうしたスタイルは崩れ、男性も女性も働きに出て、共働きで家計を維持するスタイルが一般的になってきています。
出典・http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000118655.pdf
今後、より女性の社会進出が進み、育児・介護と仕事が両立しやすい社会になれば、男女の賃金格差がより少なくなっていくでしょう。ということは、女性も大きな財産を持ったり、事業を興すために多額の借金をするケースが増えていくはずです。女性が多くを稼げるようになれば、生活苦のためにやむなくする借金だけではなく、もっと生活を豊かにする目的で借金をする機会も増えるでしょう。従って、借金に困って債務整理を行う人の男女比の偏りは少なくなっていくと考えられます。
借金問題は男女どちらにとっても身近な問題です。借金に困ったら、お早めに専門家に相談されることをおススメします。
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