個人再生にかかる期間は、相談から受任を経て再生計画の認可決定まで1~2年程度ですが、ポイントを踏まえることで手続き期間を圧縮できます。個人再生の手続き期間の目安や、早く終わらせる方法、借金減額後の返済期間やブラックリスト(信用情報機関に事故情報として登録)期間についても概説します。2回目の個人再生も原則として可能ですが、1回目にない注意点があります。個人再生を円滑に行うためには、弁護士選びにも注意しましょう。
個人再生の手続き期間の目安

個人再生の手続き期間は一般的には1~2年程度であり、全てスムーズに行っても半年以上はかかります。この手続き期間には、「裁判所に申し立てる前の準備期間」や「再生計画の作成と認可決定」などの時間も含まれています。
個人再生は地方裁判所に申し立てて手続きを行います。手続きの具体的な運用は各裁判所によって異なり、手続きの期間にも違いがあるため、より正確な見通しは、事前に弁護士に問い合わせされると良いでしょう。
個人再生は債務整理の中でも特に手続きが煩雑で、取り寄せや作成が必要な書類も数多く、スムーズに進めるには法律的な知識が必要です。法律上は申立人本人のみでも行える手続きですが、実質的には専門家の関与が欠かせない手続きと言えます。債務整理に強く、コミュニケーションをとりやすい法律家に依頼されることをお勧めします。
個人再生の手続きの流れと期間
個人再生の手続きについて、ここでは9つの段階に分けて流れと期間を解説します。事前の弁護士への相談から始まり、裁判所での手続きを終えて再生計画に基づいた返済がスタートするまで、多くのプロセスと注意点があります。
目次
- 1 (1)専門家に相談・依頼
- 2 (2)申し立ての準備(期間:1か月~数か月程度)
- 3 (3)裁判所に申立て
- 4 (4)個人再生手続開始決定(申立てから1か月程度)
- 5 (5)再生債権の届出及び評価申立
- 6 (6)再生計画案を提出(申し立てから3~4か月後)
- 7 (7)書面決議もしくは意見聴取
- 8 (8)認可決定(申立てから5カ月程度)
- 9 (9)再生計画案に従った借金の分割払いがスタート(申立てから6カ月程度)
- 10 (1)弁護士に依頼されたことは早めに行うよう心掛ける
- 11 (2)弁護士とコミュニケーションをとる
- 12 (3)費用を早めに支払い終える
- 13 (1)裁判所の審査のハードルが上がる
- 14 (2)債権者から反対される可能性が高まる
(1)専門家に相談・依頼
最初に弁護士や司法書士に相談します。
正式に個人再生を依頼すると、専門家は直ちに各債権者に「受任通知」を発します。受任通知は、債権者が債務者に直接連絡することを禁止する効果があり、以後、督促等は来なくなります。ただし、司法書士に個人再生を依頼した場合、申立書の作成は行えますが、地方裁判所での代理権が法律上認められていないことから、「本人申立」として扱われます。また、本人申立では必ず選任される個人再生委員へ支払う報酬もかかり、負担する費用が増える可能性があります。
(2)申し立ての準備(期間:1か月~数か月程度)
必要な書類を集め、債務者の財産や債務の状況を正確に把握します。これは裁判所に申し立てる準備であるとともに、借金や収入、家計に関する状況を整理し、客観的に把握し、現実的に支払い可能な再生計画を考えるための準備でもあります。
また、個人再生は「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の二種類の手続きがあり、どちらかを選択します。通常は、借金の減額幅が大きい小規模個人再生が選択されます。
これらの準備には1か月~数か月程度かかります。弁護士費用(着手金)の分割払いをこの期間に行うケースもあります。
(3)裁判所に申立て
再生申立にあたり必要となる書類は多岐にわたりますが、申立に必要な書類が整い次第、裁判所に提出します。裁判所から訂正や追加の書類提出を求められることもあり、申立てから再生手続開始決定までは1か月程度かかると考えてください。
(3-1)個人再生委員の選任と履行テストの開始
東京地裁では全ての個人再生で「個人再生委員」が選任されます。個人再生委員とは、申立人の財産や収入の調査や再生計画作成にあたって助言などを行う弁護士です。
個人再生を申立てると、一週間程度で個人再生委員が選任されます。選任から概ね1週間以内に申立人との面談が行われます。事前に弁護士に依頼している場合は、代理人の弁護士も同席するので、心配しないでください。
また、再生委員との面談後に、債務者が再生計画案通りの返済がきちんと行えるかどうか判断するため、「再生計画で弁済する予定額」を6か月にわたって毎月積み立てを行う「履行テスト」があります。
※東京地裁以外の地方裁判所では、基本的には個人再生委員が選任されるケースは少なくなっています。借入先が多かったり、評価しづらい財産が多かったりする場合は複雑なケースとして個人再生委員がつくことがあります。
個人再生委員がついたからと言って、個人再生の成功率が下がるわけではないので、過度に気にする必要はありません。
(4)個人再生手続開始決定(申立てから1か月程度)
個人再生委員との面談後、速やかに一回目の履行テストの予納金の入金をします。また、個人再生委員から追加書類を求められることもあります。
個人再生委員は再生債務者から事情聴取をし、再生手続開始に関する意見書を裁判所に提出します。裁判所は提出された意見書をもとに開始の相当性を判断し開始決定または棄却の決定を行います。
(5)再生債権の届出及び評価申立
裁判所は各債権者のもとに、申立人が作成して提出した「債権者一覧表」を送付します。債権者は内容を確認して、異議がある場合は「債権の届出」を行います。債権届出期間の締め切りは個人再生手続開始決定から約6週間後に指定されます。
この期間に、債権者が何もしなければ、申立人が申告した通りの内容で確定します。
債権の届出があった場合は、さらに申立人から異議を唱える期間が発生します。この期間が終わると債権額が確定します。
(6)再生計画案を提出(申し立てから3~4か月後)
申立人は、確定した債権額をもとに、今後の返済計画である再生計画を作成して裁判所及び個人再生委員に提出します。この再生計画の期限は厳格で、必ず守らなければならず、1日でも遅れると再生手続が廃止になります。
(7)書面決議もしくは意見聴取
裁判所は提出された再生計画案を各債権者に送付するとともに、手続きが小規模個人再生の場合は「書面決議」、給与所得者等再生の場合は「意見聴取」を行います。
一般的に用いられる手続きは小規模個人再生ですが、この手続きを選ぶと、債権者に再生計画案に同意するかどうかを問う書面決議が行われます。
債権者総数の過半数以上が不同意の意思を示すか、借金総額の2分の1以上を有する債権者が不同意であった場合は、個人再生手続きが廃止になってしまいます。
他方、給与所得者等再生の場合は、債権者に意見聴取が行われますが、債権者が不同意だからと言って再生手続きが廃止されることはありません。
(8)認可決定(申立てから5カ月程度)
個人再生委員は債権者からの書面決議や意見聴取の結果を踏まえ、認可の可否に関する意見書を裁判所に提出し、裁判所は再生計画案の認可または不認可の決定を行います。
再生計画案認可決定から約2週間後に官報で公告され、その後2週間すると確定します。
なお、個人再生委員による履行テストで積み立てたお金は、個人再生委員の報酬を差し引いて返還されます。
(9)再生計画案に従った借金の分割払いがスタート(申立てから6カ月程度)
再生計画案の認可決定が確定すると、再生計画案に従った借金の返済が始まります。原則3年、最長5年かけて返済します。
個人再生を早く終わらせるには
個人再生を早く終わらせるためには、手続きをスムーズに運ぶ必要があるため、弁護士に依頼されたことは早めに行うよう心がけましょう。また、依頼した弁護士としっかりコミュニケーションをとることも大切です。加えて、個人再生にかかる費用を早く払い終えることで手続き期間を短縮できます。
(1)弁護士に依頼されたことは早めに行うよう心掛ける
弁護士に書類を取り寄せたり、作成したりするよう求められた際は、早めの提出を心がけることで手続き期間の短縮が可能です。例えば家計簿の作成など、本人でなければ作れない書類もあります。入手・作成が遅れている書類があると専門家も手続きを進められないので、できることは早めに済ませてしまいましょう。
個人再生の場合は仕事をしながらの手続きになるので、仕事との両立は大変だと思いますが、借金問題の早期解決を目指してがんばりましょう。
(2)弁護士とコミュニケーションをとる
弁護士は、手続き中に確認したいことや打ち合わせしたいことができたときには連絡してきます。こうした連絡の返事や折り返し連絡が遅れがちになると、それだけ手続き期間も長引きます。
逆に、弁護士のほうが連絡が遅く、結果して手続きが長引くケースもありますので、事前の相談の段階で弁護士としっかりコミュニケーションをとり、連絡の取りやすい弁護士に依頼すると良いでしょう。
(3)費用を早めに支払い終える
弁護士費用や裁判所費用等を早めに支払い終えると、個人再生の手続期間を圧縮できます。その理由は、専門家は費用を払い終わるまでは申し立てをしないケースが多いからです。一括で払えれば一番いいのですが、ボーナスを充てるなど、できるだけ積み立ての回数を減らして、費用を支払い終えるまでの期間を圧縮しましょう。
ただし、持っている財産を現金化して支払った場合、裁判所に財産隠しを疑われることがあるので、かならず事前に専門家に相談してアドバイスを受けてください。
個人再生の返済期間は原則3年
個人再生によって減額された借金の返済期間は原則3年です。しかし、特別の事情がある場合は最長で5年まで支払い期間を延ばすことが可能です。(民事再生法229条2項)
「特別の事情」とは、例えば、返済期間中に子供が進学して学費がかさむことが予想されるケースなどがあります。延長の理由は具体的である必要があり、漠然と「3年だと返済が苦しいから、5年にしてほしい」というだけでは、延長は認められません。
家計の中で調整が可能な娯楽費・交際費が多めな場合や、賞与が多いケースなどでは、期間の延長が認められないことがあるので注意してください。
個人再生でブラックリストに登録される期間
個人再生をすることで信用情報機関に事故情報(いわゆるブラック)として登録される期間は5~7年です。
個人再生などの債務整理を行うと、個人のお金の貸し借りを記録する機関である信用情報機関に記録が残ります。
信用情報機関とは、日本の金融機関や貸金業者、クレジットカード会社などが加盟する企業で、お金の融資やクレジットカードの審査をする際には信用情報機関の記録を参照します。
個人再生は「お金を返せなくなり借金の減額を行った記録」ですので、融資等にはネガティブ情報(事故情報)となり、この記録があるうちは新規の借り入れが難しくなります。信用情報機関の記録に事故情報が掲載されることをブラックリスト入りと言います。
事故情報はずっと掲載されるわけではなく、個人再生の場合は5~7年で削除されます。事故情報が消えた後は以前のように借金やクレジットカードの利用が可能です。
2回目の個人再生は可能か?
過去に個人再生を申し立てたことがあっても、2回目の個人再生を行うことは原則として可能です。
1回目が、よく用いられる手続きである「小規模個人再生」であれば、特に期間の制限なく申立てを行うことができます。
ただし、1回目の手続きが給与所得者等再生だった場合は、その後7年経つまでは、2回目の個人再生をすることはできません。
2回目の個人再生には、以下の注意点があります。
(1)裁判所の審査のハードルが上がる
2回目の個人再生は、申立て自体は問題なく行えても、再生計画が認可されるまでの裁判所の審査は厳しくなると考えてください。
一度個人再生をして借金を減額したのに、また個人再生をするわけですから、裁判所が納得するような返済計画を練って提出しなくてはなりません。
また、個人再生委員が選任される場合は、2度目の個人再生に至った経緯について質問される可能性があるので、具体的に説明できるよう準備しておく必要があります。
こうした事情から、1回目の個人再生時より時間や労力がかかる可能性があります。
(2)債権者から反対される可能性が高まる
二度目の個人再生を小規模個人再生で行う場合は、債権者の書面決議で不同意とされる可能性が高まります。
特に、1回目のときと同じ債権者から再び借金をしていた場合は、消極的同意は得にくいでしょう。
このようなケースでは、あらかじめ給与所得者等再生によって手続きすることも検討したほうが良いでしょう。給与所得者等再生には債権者の書面決議がないからです。
2回目の個人再生は1回目より注意を要するので、専門家とよく相談したうえで方針を決めて行いましょう。
個人再生を円滑に行いたい場合は弁護士に相談を
個人再生を素早く終了させるために最も大切なのは、申立人の準備や協力ですが、個人再生や自己破産を多く取り扱っている経験豊富な弁護士に依頼することが大切です。
個人再生にかかる期間は前述のとおり1~2年程度ですが、地域差もあるので一概には言えず、正確なことはその地域で個人再生の経験がある弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士を選ぶ際は、個人再生の実績の有無のほかに、コミュニケーションをとりやすいかどうかも加味してください。連絡が取りやすい弁護士であれば、手続きや書類作成にあたっての疑問点なども気軽に聞くことができ、その結果、正確かつスムーズに進めることができるでしょう。個人再生は長丁場の手続きですので、専門家との相性も大切にしてください。
複数の弁護士に相談して、その中からよさそうだと思った弁護士に依頼することも可能ですので、まずは無料相談を受けられることをお勧めします。

所属弁護士会 東京弁護士会 No.44304
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