債務整理は借金問題を合法的に解決する手続きです。任意整理は債務整理の一種で、裁判所を通さずに債権者と交渉し、借金を減額したり将来利息をカットしたりできます。債務整理の種類や特徴、任意整理に向いている人やメリット・デメリットをご紹介します。あわせて任意整理ができない人と、解決方法についても説明します。
目次
債務整理と任意整理の違いとは
「債務整理」は、借金に困っている人が借金負担を軽減、ないしは借金をなくすことができる合法的な手続きの総称です。いくつかある手続きのうち、裁判所を通さず法律家を介して債権者と交渉する手続きのことを「任意整理」といいます。
【債務整理の主な種類】
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
- 特定調停
言葉の感じが似ているので混同しやすいですが、例えば、「犬」の一種が「柴犬」であるように、「債務整理」の一種が「任意整理」となります。
・債務整理の意味
債務とは、法律上、やらなければならない義務のことで、ここでは借金を返すことを債務と呼びます。そのままでは払いきれない債務の負担をいったん整理し、軽減するための手続きなので、債務整理といいます。これに対して、お金を貸した側は債権者と呼びます。
・任意整理の意味
任意整理以外の債務整理は裁判所を通す公的な手続きですが、任意整理の場合は法律家のみを通す私的な手続きとなり、強制力のない「任意の」借金整理となります。そのため、任意整理と呼ばれています。
裁判所を通す手続き |
裁判所を通さない手続き |
・個人再生 | ・任意整理 |
・自己破産 | |
・特定調停 |
裁判所を通す手続きのうち、「個人再生」や「自己破産」は借金の大幅減額や免責といった強力な効果が発生します。
他方、任意整理はそのような強力な効果はない代わりに、社会的な影響が少なく、家族や周囲に知られずに借金問題を解決できるという強みがあります。
特定調停はその中間的な手続きですが、手間がかかるなどの問題点があり、特定調停を選ぶ人は多くないのが現状です。
任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の特徴解説
(1)任意整理
法律家を通し、債権者と交渉を行って、延滞利息や将来利息のカットなどを申し入れ、借金返済の負担軽減を図ります。一般的には3~5年ほどの期間の分割払いをすることで合意します。
通常、借金の元本はそのまま残るため、借入額が少額等、比較的軽い人に向いています。多くの金融機関や貸金業者が任意整理に応じてくれますが、あくまで私的な交渉なので、中には決裂してしまうケースもあります。
任意整理を行うと一定期間(5年程度)、新たなローンができなくなりますが、他の債務整理に比べてデメリットの最も少ない方法です。
(2)個人再生
裁判所を通した手続きで、ローン返済中のマイホームを守りつつ、住宅ローン以外の借金を大幅に減額することができます。借金額が大きく任意整理では難しいが、家は手放したくないというケースに向いています。
住宅ローン以外の借金が5,000万円以下の人が行うことができ、借金を5分の1~10分の1程度にまで減額できます。
個人再生手続きも、一定期間新たな借り入れができなくなります。また、個人再生は住宅ローン以外のすべての借金を対象とするため、保証人がいる借金については保証人に請求が行きます。
そのほかのデメリットとしては、官報に氏名や住所が掲載されます。手続きに手間がかかり、必要書類も多いため、同居の家族に知られずに個人再生を行うのは難しくなります。
(3)自己破産
裁判所を通した手続きで、債務の返済ができなくなったとき(支払い不能)裁判所に申立を行い、債務を免除してもらう手続きです。原則的には所有する財産をお金に換えて債権者に配当しますが、裁判所が定める基準(20万円以下の預金など)の財産は手元に残すことができます。
また、個人再生手続きと同様に、新たな借り入れが一定期間できなくなり、保証人に請求がされることや、官報に告知がされる、家族に知られる可能性があります。
(4)特定調停
返済に窮した債務者が簡易裁判所に対して申立を行い、債権者との話し合いを仲裁してもらう手続きです。裁判所は解が成立するよう支援しますが、債権者が協力的でなかったり、失敗するケースもあり一般的にはあまり利用するケースは多くはいません。
任意整理のメリットと向いている人
・家族や周囲に借金や債務整理の事実を知られたくない人
任意整理をしても、家族や仕事場など、周囲に知られるおそれはほとんどありません。任意整理をしたからと言って会社を解雇されるようなことはありませんが、借金をしていることや、払いきれなくなったという事実をできるだけ隠しておきたい人に向いています。
任意整理の際、専門家に家族や周囲に知られたくない旨を相談すれば、郵便や電話などでの連絡の際、周囲にわからないよう可能な限り配慮してもらえます。また、債権者とのやり取り法律家を介して行われますので、債権者からの連絡などが債務者に直接届くことはありません。
また、個人再生や自己破産、特定調停といった裁判所を通す手続きの場合、様々な書類を取り寄せたり、作成したりしなければならず、その分家族等に見られるリスクが増えます。しかし、任意整理ならばそのリスクは減ることになります。
また、任意整理であれ官報に情報が載ることもありません。個人再生や自己破産をすると、政府が発行する官報に名前と住所が記載されます。一般の人が官報を読むことはほとんどないので、このことから直ちに周囲に知られることはまずありません。しかし、官報の情報をもとに闇金業者が融資のダイレクトメールを送ってくることがあります。この郵便物を家族にみられ、借金があると推測される恐れがあります。
・債権者からの催促に悩まされている人
任意整理を弁護士等の専門家に依頼し、弁護士等が受任通知を債権者に発すると、それ以降は債務者に対して直接取り立てをすることや、連絡を取ることが法律で禁止されます。借金を滞納し、債権者から何度も督促にあい、それまでのストレスから解放されます。
・借金やローンを長期間滞納している人
ローンを長期間滞納している人は、新たなデメリットを心配せずに任意整理ができます。
債務の返済が概ね3か月滞納すると、お金の貸し借りの情報を金融機関の間で共有する「信用情報機関」のデータに事故情報として記載されてしまいます。こうなると、一定期間、どこの金融機関からも新たな借り入れができなくなります。
任意整理をした際のデメリットとして、信用情報機関に記録が残ることがあります。しかしすでに滞納した情報が記載されている場合、任意整理をしても新たなデメリットは生じません。
・借金の利息分だけでも無くなれば払いきれそうな人
任意整理は、原則として借金の元本を減額することは難しく、利息分や遅延損害金などを免除してもらうことが一般的です。そのため、借金の負担が今より軽くなれば、何とか生活していけそうな人に向いています。
・保証人に迷惑をかけたくない人
任意整理は整理する借金の対象を選ぶことができます。借金に保証人がついていると、債務整理の際、本人の代わりに保証人に借金を支払うよう請求が行きます。しかし、任意整理であれば、保証人が付いている借金を整理の対象から外すことができるので、保証人に知られることもなく、迷惑をかけずに済みます。
また、保証人のいる借金を任意整理する場合でも、保証人に相談して、ともに任意整理すれば、和解交渉も可能です。この場合、保証人には任意整理の事実が知られてしまいますが、最小限の影響で済ませることができます。
・ローン返済中の自動車・バイクを手放したくない人
債務整理をすると、ローン中の自動車やバイクはローン会社によって引き上げられてしまうことが多いです。しかし、任意整理ならば自動車ローンやバイクのローンを整理対象から外すことができ、これまで通り使い続けることができます。
仕事や移動手段、家族の送り迎えなどでどうしても車やバイクが必要という場合には、任意整理を選択しましょう。
・その他、整理したい借金とそのまま支払いたい借金がある人
例えば、消費者金融からの借金の負担は軽くしたいけれど、会社からの借金は支払い続けたい、といった場合にも、希望に応じて特定の債務だけを整理することができます。
・過払い金がありそうな人
過去に返済した借金の中に過払い金がありそうな人は、引き直し計算を行うことで、現在の借金を軽減、あるいはゼロにできるケースがあります。10年以上前から借り入れを繰り返していたり、クレジットカードのキャッシングを利用していた人は、一度過払い金がないか調査してみるとよいでしょう。
任意整理のデメリットと任意整理ができない人
・現在の収入では借金がとても払いきれない人
任意整理は、安定的かつ継続した収入がある人が、借金の元本を3~5年の分割払いにして返済するケースが一般的です。通常、任意整理による交渉で免除してもらえるのは利息や遅延損害金のみで、借りた金額である元本は支払います。
収入はあるものの十分でなく、現在抱えている借金の元本を5年程度ではとても払いきれそうにない人は、任意整理による解決は難しくなります
もっとも、10年以上前から借金やクレジットカードのキャッシング利用歴があり、過払い金が発生しているケースでは、任意整理により借金の元本を減らせることがあります。心当たりのある人は相談してみましょう。
・収入がない人
任意整理は原則として借金の元本を支払う手続きですので、病気等により失業して収入が途絶えた人は任意整理による借金解決はできません。
・今までに1度も返済していない人
任意整理は私的な交渉による借金の解決方法ですので、「お金を借りたものの一度も返済していない」など特殊なケースでは、債権者の協力が得られず、利息のカットや長期分割に応じてもらえないことがあります。
・今後5年以内にどうしても新たな借り入れをする必要がある人
任意整理に限らずすべての債務整理に共通するデメリットですが、債務整理をするとその情報が信用情報機関に登録され、その後5~7年にわたって新たな借り入れができなくなります。
自営業などで、どうしても5年以内に新たな借り入れをしたいという人の場合は、債務整理以外の方法で借金負担を軽くする方法を考えることになります。
任意整理が出来ない場合はどうしたら良い?
・借金額が大きすぎる人の場合
借金額が大きすぎる場合は、状況に応じて個人再生か自己破産を選択することになります。継続的・安定的な収入があり、ローン中のマイホームを手放したくない場合には、個人再生手続きが考えられます。
・収入がない人の場合
収入がなく、借金の額も大きい場合は、自己破産を選択するしかありません。自己破産をすると一定額以上の財産は手放さなくてはなりませんが、代わりに借金は免責されます。
また、債務の額が比較的少ない場合、新たな仕事に就くことで収入を得て、任意整理をすることも可能です。アルバイトや派遣社員であっても、毎月借金返済ができる程度の安定的で継続的な収入があれば任意整理は可能です。主婦であっても継続収入があれば任意整理はできます。
・債権者との交渉が決裂しそうな人の場合
返済状況や、その他の事情により、債権者との和解が難しそうな場合は、裁判所を通した手続きである個人再生や自己破産を選択することになります。
・事故情報(いわゆるブラックリスト)に載りたくない人の場合
借金額が比較的軽微であれば、家族や友人からお金を借りて金融機関への返済に充てる、持っている価値のある財産を処分するなどの方法で、債務整理をせずに解決できることがあります。
また、過去の借金に関して過払い金が発生しており、過払い金の額が現在の借金の金額を上回る場合は、任意整理を行うことで、ブラックリストに載らずに借金を整理できるだけでなく、過払い金を受け取れることもあります。
借金額も大きく、過払い金の発生もない場合は、ブラックリストに載ることを覚悟して債務整理をされたほうが良いでしょう。ブラックリストの効果は、当分の間新たな借り入れができなくなることだけですので、社会的影響はそれほど大きくありません。
信用情報機関のブラックリストに入っても、家族や周囲に知られたりすることはありません。ましてや、それを原因に会社を首になったりすることもありません。また、5~7年ほどで記録が消えるので、住宅ローンや車を購入するする際,ローンが組める可能性はあります。
まとめ
借金が苦しく、「自己破産をするしかない」と思っても、専門家に相談することで状況を整理でき、任意整理や個人再生で問題が解決できることがあります。
また、債務整理についてネットや本で調べて、「任意整理でなんとかなりそうだ」と思っても、その人の収入や置かれている状況によっては、個人再生や自己破産をしたほうがいいケースもあります。
全てはその人それぞれのケースによって異なります。債務整理が得意な法律事務所の無料相談などを利用し、最適な債務整理方法を見つけられることをお勧めします。

所属弁護士会 東京弁護士会 No.44304
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