自己破産の管財事件と同時廃止の違いについて解説します。自己破産の種類には大きく分けて同時廃止と管財事件があります。自己破産を依頼した弁護士が管財事件か同時廃止か事前に判断し裁判所に申立を行い、裁判所がどちらの手続きが適切か判断します。管財事件のほうが費用が多くかかるため、同時廃止のほうがより良い手続きと言えます。どちらの手続きになるかの目安や、管財事件になった場合の流れ、管財事件になった場合の注意点についてまとめました。
自己破産の手続きは2種類

自己破産には、大きく分けて「管財事件」と「同時廃止」の2種類の手続きがあり、どちらになるかは裁判所が決定します。
自己破産の際、管財事件になるか、同時廃止になるかは、裁判所費用や手続きにかかる期間が大きく異なることがあり、大切な問題です。
目次
- 1 管財事件とは
- 2 同時廃止とは
- 3 (1)財産があるか
- 4 (2)個人事業主かどうか
- 5 (3)ギャンブルや浪費が原因の借金か(免責不許可事由があるか)
- 6 (1)費用
- 7 (2)手続きの手間
- 8 (3)手続きにかかる期間
- 9 (1)法律相談・弁護士に依頼
- 10 (2)債務額の調査・費用支払い
- 11 (3)自己破産申立て・破産手続開始決定
- 12 (4) 破産管財人との面談
- 13 (5)換価・配当の手続き
- 14 (6)債権者集会
- 15 (7)免責審尋
- 16 (8)免責許可の決定
- 17 (1) 費用が高くなる
- 18 (2) 裁判官や破産管財人には誠実に対応する
- 19 (3) 偏頗(へんぱ)弁済をしない
- 20 (4)事前に専門家のアドバイスを受ける
管財事件とは
自己破産手続きのベースとなる手続きで、主に財産のある人や、破産管財人が詳しく事情を調査する必要のある事件について採用されます。管財手続になると、裁判所により「破産管財人」が選任されます。破産管財人は破産事件の専門家である弁護士で、破産者の財産の管理や処分、債権者への配当などを行います。
同時廃止とは
自己破産で財産がなく、事件の内容も単純なケースについて、破産管財人が選任されない手続きです。破産管財人に報酬として支払う費用が発生しないため、管財事件よりコストが安く、また手続期間もスピーディーです。
日本弁護士連合会の「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査(https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/books/data/2020/2020_hasan_kojinsaisei_1.pdf)」によれば、自己破産のうち68.55%が同時廃止となっています。
管財事件となっても同時廃止となっても、所定の手続きを経て免責決定を得れば借金の支払い義務が免除されます。
どちらになるかは裁判所が決定しますが、振り分けの目安はありますので、知っておくとあらかじめ心構えをして自己破産に臨むことができます。
自分がどちらの手続きになるのかの見分け方
管財事件になるか、同時廃止になるかは、「財産があるか」「個人事業主かどうか」「ギャンブルや浪費が原因の借金か(免責不許可事由があるか)」の3つから見分けることができます。
(1)財産があるか
財産の有無については、各裁判所によってやや判断基準が異なります。東京地方裁判所では、①現金が33万円以上あるか、②換金して20万円以上になる財産を所有しているか、③借金の主な原因がギャンブルなどによる免責不許可事由が明らかで、その程度も軽くない場合。などが主なポイントになります。当てはまる場合は管財事件になる可能性が高くなります。
① 現金が33万円以上あるか
法人の破産とは違い、自然人は、自己破産した後も生きて行かなくてはなりません。手持ちのお金が33万円以下の場合は、原則として「同時廃止」として手続きにかかる費用を抑え、生活費が確保できるようにとりはかられています。33万円を超える現金を持っている場合、管財事件となります。
② 換金して20万円以上になる財産を所有しているか
東京地裁の場合、20万円を超える価値のある財産は原則として処分対象となります。そのため、管財事件となり、対象となる財産は処分され債権者へ配当されます。
財産価値は、全ての財産を合計して20万円というわけではなく、財産ごとに判断されます。例えば、10万円の絵画と、15万円の貯金を持っている場合は、どちらの財産も20万円に満たないため、財産処分の対象とはなりません。
不動産は多くのケースで20万円以上の価値があるので、通常は処分対象となり、管財事件になります。ただし、山奥の土地など、簡単には買い手が見つからないケースでは換価処分の対象外となる事があります。
車やバイクも例外ではありませんが、購入後数年経っていれば通常は中古車としての価値が20万円以下となりますので、高級車や特別な機能が付いた車でなければ同時廃止となる可能性が高いです。
(2)個人事業主かどうか
個人事業主の場合、原則として管財事件となります。理由としては、以下が挙げられます。
- 取引先や関係先が複数あることが多い
- 在庫や事業所、事業に必要な機材など、処分すべき財産があることが多い
- 従業員を雇っているケースが多い
こうした場合、破産管財人が正確な財産・負債の額や相手先、財産隠しの有無などを調査する必要があるので、管財事件になります。
とはいえ、エンジニアやライターなど、一企業からのみ仕事を得ていて、実質的には当該企業の従業員と変わらない扱いを受けている場合には同時廃止となる可能性があります。
(3)ギャンブルや浪費が原因の借金か(免責不許可事由があるか)
自己破産には「免責不許可事由」と言って、借金をゼロにする制度である「免責」が受けられなくなるケースが法律上存在します。代表例が、ギャンブルや浪費による借金です。
もっとも、免責不許可事由があっても、裁判所が裁量によって免責を許可することができます。裁判所は「ギャンブルや浪費で借金を作った経緯」や「本人が同じことを繰り返さないように反省しているか」と言った点を詳しく調査し、免責を許可していいかどうかを決定します。
この調査を行うために破産管財人が必要なため、ギャンブルや浪費が原因の借金は、財産が無くても管財事件となります。
ギャンブルや浪費が原因の借金の場合でも、破産管財人や裁判官との面接に、正直かつ真摯に望むことによって、ほとんどのケースで免責が受けられます。
どちらの手続きの方が良いのか?
同時廃止は、費用、手続きにかかる時間、手続きにかかる手間いずれにおいても管財事件より安価・迅速・簡便で、破産者にとってより良い手続きと言えます。
事前の法律相談などから、自己破産が同時廃止で済む見込みであれば、早めに手続きをとることをお勧めします。他方、管財事件となる可能性が高いケースで、財産や収入の状況などによっては、自己破産以外の債務整理も検討したほうが良い場合もあります。
(1)費用
同時廃止の場合、裁判所費用は2万円ほどで済みます。しかし、管財事件の場合は、少なくとも20万円以上はかかります。
なお、自己破産の前に弁護士に依頼しておくと、管財事件の中でも「少額管財」という、比較的コストの安い手続きになる可能性が高くなります。これは、準備段階から専門家が関与することで、破産管財人の負担が軽減すると考えられているからです。裁判所費用は最低20万円~となります。
管財事件となるケースで、弁護士を頼まないで本人申立や司法書士の申立代行の場合、通常管財と言って、最低でも50万円以上かかる手続きとなります。弁護士に頼んで少額管財となった場合のほうがトータルで費用が安い可能性もあるので、自己破産の前には弁護士に相談して、ご自身のケースではどのような手続きがベストか検討されることをお勧めします。
(2)手続きの手間
同時廃止においても裁判官からの免責審尋は行われますが、一般的な質問が中心となり、問題がなければ破産手続きは終了し、免責許可の決定が出ます。
他方、管財事件においては、破産管財人と面談のほか、裁判官との面接があり、免責不許可事由がある場合においてはさらに反省文の提出が求められることがあります。
とはいえ、弁護士に依頼してあれば面接や面談に同席してくれますし、予め内容を打ち合わせることができるので、過度に心配することはありません。
(3)手続きにかかる期間
先述した日本弁護士連合会の「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査(https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/books/data/2020/2020_hasan_kojinsaisei_1.pdf)」によれば、同時廃止となった場合の破産申立から免責決定までの期間は、平均107.40日と、3ヶ月強となっています。
他方、管財事件となった場合は6ヵ月以上かかるとされています。
【種類別・手続き費用と期間の目安】

管財事件になった場合の流れ
管財事件となった場合、おおむね以下のような流れで手続きが進んでいきます。ただし、手続きの流れは裁判所によっても異なりますので、依頼された弁護士にお尋ねください。
(1)法律相談・弁護士に依頼
事前に弁護士に法律相談を行います。自己破産の依頼者はお金に困っているので、相談無料にしている法律事務所も多いことが特徴です。
自己破産を弁護士に正式に依頼すると、受任通知が各債権者に発せられ、以降債権者は本人へ直接の連絡や取り立てができなくなります。
(2)債務額の調査・費用支払い
弁護士は各債権者から取引履歴を取り寄せ、債権届出を受け、正確な債務額を調査します。
弁護士費用は基本的には申立てまでに分割して支払います。管財事件の場合、管財費用の準備ができないことがあるので、申立て前に積み立てを行い、支払えるようになってから申し立てを行います。
(3)自己破産申立て・破産手続開始決定
裁判所が提出書類を確認し、問題が無ければ破産手続開始決定を出します。裁判所によっては裁判官との面接がありますが、弁護士に頼んでいる場合は通常弁護士が対応します。審査や面接の結果から、管財事件か同時廃止かが決定されます。
管財事件となった場合、破産管財人が選任されます。この時点で予納金(破産管財人に対する費用)を支払わなくてはなりません。
(4) 破産管財人との面談
破産者と管財人との面談が実施されます。弁護士も同席します。
(5)換価・配当の手続き
破産管財人によって財産の処分換価や債権者への配当手続きが進められます。管財人から協力を求められることがあるので、誠実に対応しましょう。
(6)債権者集会
破産管財人の調査終了後、調査結果や破産者の財産の状況を債権者に報告するための債権者集会が行われます。破産者は出席しなくてはなりません。他方、金融機関などの債権者はほとんど来ないのが普通です。
(7)免責審尋
免責審尋とは、裁判官が「この人を免責しても良いか」を判断するために、本人と面談する手続きのことです。
(8)免責許可の決定
免責審尋後、破産手続きは終了し、問題が無ければ裁判官が免責許可の決定を出します。
管財事件になった場合の注意点
管財事件の最大の注意点は、「費用が高くなる」ことです。他にも、「裁判官や破産管財人には誠実に対応する」「偏頗(へんぱ)弁済をしない」「事前に専門家のアドバイスを受ける」と言ったポイントがあります。
(1) 費用が高くなる
管財事件となった場合、少額管財でも最低20万円の予納金を裁判所に納めなくてはなりません。また、弁護士費用も35万円以上はかかると考えたほうが良いでしょう。
「今、お金に困って自己破産を考えているのに、50万円以上のお金を工面できない…」と悩まれると思いますが、自己破産などの債務整理に強い法律事務所の場合、手続き前に積み立てを行って費用を貯めたり、弁護士費用の分割払いに応じたりするなど、手続き費用をねん出できるような配慮があります。
(2) 裁判官や破産管財人には誠実に対応する
裁判官や破産管財人には嘘をつかず、ごまかしたりせずに正直に対応し、面接や審尋には真剣な態度で臨みましょう。破産管財人から財産管理や情報照会に関し協力を求められたら誠実に対応しましょう。
不誠実な言動としては、例えば、以下のものがあります。
・本当はギャンブルで作った借金なのに裁判官に悪く思われたくなくて理由をごまかす
・財産を処分換価されるのが嫌で、親戚に財産を預かってもらうなどの財産隠し
こうした不誠実な言動が発覚した場合、免責が不許可になる可能性があり、せっかく手続きをしたのに借金がそのまま残る恐れがあります。特に、管財事件は破産のプロである管財人が調査を行い、不審な点がないかチェックしますので、ごまかすのは難しいと思ってください。
(3) 偏頗(へんぱ)弁済をしない
例えば、「自己破産前に恩人からの借金だけは返しておきたい」「勤め先からの借金がある」と言った場合、他の債権者に優先して特定の債権者にだけ借金を完済したくなると思います。しかし、自己破産の直前にこうした弁済をすると、「偏頗(へんぱ)弁済」と言って、免責不許可事由になることがあります。
(4)事前に専門家のアドバイスを受ける
自己破産の手続き前には、注意すべきポイントがいくつかあります。こちらの記事には代表的な注意点を掲載していますが、一口に管財事件と言っても、「財産があるのか」「ギャンブルや浪費による借金か」「個人事業主か」といった個別の事例ごとに注意すべき点は異なります。
そのため、手続きの前に法律相談を受けて、専門家からご自身のケースに関する注意点を聞いておくのが確実です。

所属弁護士会 東京弁護士会 No.44304
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