自己破産した人の個人情報を確認する方法についてまとめました。自己破産をすると官報に個人情報が掲載されますが、検索は有料会員サイトでしかできない仕組みになっています。非公式の破産者マップのようなサイトに掲載され、第三者に破産したことが知られる可能性と、個人情報保護委員会の対応について概説します。官報以外で破産者の個人情報が記録されることがある「破産者名簿」と「信用情報機関の記録」についても解説します。
破産者情報を知るための方法
自己破産をすると官報に名前や住所などの個人情報が掲載され、インターネット版官報の有料検索サービスや図書館の官報情報検索サービスで破産者の名前の検索ができます。ただし、検索は無料で簡単にはできないようになっており、非公式の情報サイトについては、個人情報保護委員会が監視を行って閉鎖させています。
破産者情報を検索して知るための方法は、主に以下の2つです。
(1)官報公式サイトの有料サービスを利用して検索する
(2)図書館の官報情報サービスを利用して検索する
官報には過去90日分のバックナンバーが掲載され、無料で閲覧できますが、紙面はpdf形式で掲載されています。Google等の無料検索サイトで検索して、すぐに破産者の氏名等が出て来る仕組みにはなっていません。
官報には、主に以下の情報が記載されます。
(1)事件番号
(2)債務者の住所
(3)氏名
(4)決定の年月日時
(5)決定の内容
(6)裁判所名
目次
※非公式サイトで破産者情報を検索可能か
自己破産をすると官報に破産者の住所や氏名が掲載されます。そのため、官報の情報をもとに誰かが破産者情報をまとめたサイトを作り、第三者に簡単に情報照会されてしまうのでは?と不安になりますよね。実際に、過去には「破産者マップ」というサイトがありました。
しかし、こうしたサイトは破産者や家族の精神的苦痛になるだけではなく、詐欺や金銭トラブルの原因になります。そのため、政府の個人情報保護委員会が行政指導を行い、「破産者マップ」は閉鎖されました。
2024年2月現在、海外で運営される「新・破産者マップ」というサイトが存在し、いまだ閉鎖されていませんが、個人情報保護委員会が2023年1月11日に刑事告発を行うなど対応に乗り出しています。
そのため、知り合いによほどあなたが自己破産したことを疑う人がいない限りは、官報に掲載されたことから、自己破産が周囲にばれてしまう可能性は非常に低いと言えます。
破産者マップの現在
破産者マップとは、自己破産した人や破産した企業の情報をGoogleマップ上にピンで表示させたサイトで、2018年12月から2019年3月まで存在していました。
破産者マップでは、誰でも無料で、自分が興味ある地域を調べ、当該地域における破産者の「自己破産手続きの日」「住所」「氏名」の3つを閲覧することが出来ました。
しかし、こうしたサイトは以下のような問題があります。
破産者は、自分が破産したことを社会や周囲に知られたくないと考えるのが一般的です。また、自己破産に理解がない人からの偏見や犯罪、トラブルを誘発しかねません。ひいては、「自己破産をすると個人情報がネットでバレる」という不安が、自己破産手続をためらわせる原因にもなります。
破産者マップは、繰り返す炎上騒ぎや、詐欺事件の発生などのトラブル、最終的には政府の個人情報保護委員会の行政指導により、2019年3月19日に閉鎖されました。また、類似のサイトも閉鎖に追い込まれています。
しかしながら、「新・破産者マップ」という同様のサイトが出現し、個人情報保護委員会が対応に乗り出しています。
新・破産者マップの出現と対応策
新・破産者マップは、かつての破産者マップと同様のサイトです。同サイトは、海外で運営しているため現地の法律が適用されるとアピールしており、情報の削除料として6万円~12万円の金銭を要求しています。仮に情報が掲載されていても、絶対に金銭を支払わないようにしましょう。
個人情報保護委員会は2022年7月と11月の2回にわたって当該サイトの運営者にサイトの停止命令を出し、2023年1月には警視庁に刑事告発しました。しかし、2024年2月現在、いまだサイトは閉鎖に至っていません。
とはいえ、過去の事例に対する個人情報保護委員会の対応を見る限り、今後も当該サイトに対して閉鎖するよう粘り強く働きかけるものと思われます。
また、このような、情報の削除に高額の金銭を要求するサイトはいかにも怪しげで、サイトを閲覧することでウイルスに感染する危険性もあるため、一般人が好んで閲覧する可能性は低いでしょう。
新・破産者マップに情報が掲載されていた、あるいは掲載される恐れがある場合の対応策は以下の3つです。
(1)絶対に金銭を支払わない
仮に言われた通りお金を支払っても、運営者側が情報を削除するとは限りません。金銭の支払い時にさらなる個人情報を聴取されて悪用されるおそれもあります。得た金銭を犯罪に用いたり、さらにお金を騙し取ったりする手段として用いる可能性もあります。
(2)サイトへ問い合わせない
サイトへの問い合わせすること自体が、個人情報を抜き取られたり、ウイルスに感染させられたりする恐れがあります。
(3)不安な場合は弁護士に相談する
上記のように、当該サイトは政府の個人情報保護委員会が閉鎖に向けて動いていますが、それでも不安がある場合は弁護士に相談してください。情報の削除を求める場合は、弁護士を通じたほうが安全です。弁護士にも得意分野があるので、破産事件だけではなく、サイバー犯罪やネット・IT関係にある程度の知識がある弁護士が望ましいでしょう。
官報に自己破産した人の情報が掲載されるタイミング
自己破産をすると、以下の2つのタイミングで官報に情報が掲載されます。
(1)破産手続開始決定時
自己破産を申立て、裁判所が破産手続きを行うことを認めると、「破産手続開始決定」が出ます。この決定が出た時に最初に官報に掲載されます。
(2)免責許可決定時
免責とは、借金の支払い義務が無くなることで、裁判所が免責を認めるともう一度官報に記載されます。
※そもそも、なぜ官報に個人情報が載るのか?
近年は個人情報保護の大切さが叫ばれているにもかかわらず、なぜ官報に個人情報が掲載されるのでしょうか。それは、債権者保護の観点からです。
債務者が自己破産をし、免責が許可されると借金は帳消しになります。すると、お金を貸した債権者にはお金が戻ってこなくなり、損失を被ります。
しかし、債務者が破産手続を開始したことがわかれば、債権者は申し出て破産手続に参加できます。すると、債務者の財産状況によっては、換価された財産からいくらかの配当を受け取れる可能性があるのです。
債務者が自己破産を申し立てる際には、債権者一覧表を作成し裁判所に提出します。破産手続きが開始されると債権者に通知されます。しかし、債務者が把握していない債権者がいる場合、通知がされないため、債権者は破産手続に参加できません。
しかし、債権者は官報をチェックしていれば、自分がお金を貸した人が破産したことがわかり、破産手続に参加できるのです。そのため、銀行や貸金業者など、お金を貸すことを業とする金融機関は官報をチェックしています。
とはいえ、IT化により情報収集方法の変化が進んでおり、今後はこうした破産者情報の官報掲載の制度や仕組みについても、変わっていく可能性があるでしょう。
官報情報を確認する方法
インターネット版官報では直近90日までPDFデータで紙面を無料公開しています。また、紙媒体の官報は、各都道府県にある官報販売所で、誰でも購入できます。あわせて、公立図書館の一部では官報が閲覧可能です。
最も簡単なのは、インターネット版官報(https://kanpou.npb.go.jp/)を参照することです。官報にある情報をキーワードや日付で検索したい場合は、お金を払って会員制の「官報情報検索サービス」に申し込む必要があります。
官報は、行政機関の休日を除きほぼ毎日発行されており、破産者の情報も多いため、一般の人がたまたま官報に興味をもって覗いたとしても、その中から特定の人の破産者情報を見つけ出す可能性は非常に低いといえます。
また、銀行等の金融機関に勤めていて職業的に官報を読む人であっても、仕事の特性上、秘密と個人情報の保持が必要とされる職業には守秘義務が発生します。また、官報に記載されている情報であっても、本人の許可なく破産者の情報をネットで公開したり、周囲の人に言いふらしたりした場合、名誉毀損罪にあたる可能性があります。
官報以外に破産者情報が載ることはあるのか
官報以外で破産した情報が載る可能性があるケースとしては、本籍地の市町村役所が管理している「破産者名簿」と、「信用情報機関の記録」の二つがあります。どちらにしろ、自治体や情報管理のプロの手によって厳格に管理されており、ここから破産者情報が広まるおそれはありません。
(1)破産者名簿とは
破産者の本籍地の市区町村が管理している名簿で、登録される期間は、破産開始決定から復権するまでの間に一部の人が破産者名簿に登録されます。
これは、自治体が身分証明書を発行するために利用する名簿で、破産者ではないことを証明してくれるものです。名簿自体は非公開です。また、本人や本人の法定代理人など、限られた人しか身分証明書を請求することは出来ません。
自己破産手続をした場合、大きな問題がない限り、ほとんどのケースで免責が認められます。以前は破産開始決定がでたら必ず破産者名簿に掲載される運用でしたが、2004年の破産法改正に伴い、免責不許可決定を受けた場合のみ掲載される運用に変わりました。したがって、破産者名簿に掲載されることを心配しなくても大丈夫です。
(2)信用情報機関の記録とは
信用情報機関の記録とは、日本に3つある個人のお金の貸し借りの履歴を管理・保管している機関の記録のことで、自己破産をするといずれかの機関の記録に必ず掲載されます。
信用情報機関の記録は5~10年ほど残り、記録が残っている期間中は銀行やカード会社等金融機関から新たにお金を借りることは難しくなります。
信用情報機関とは
信用情報機関とは、ローン等の金融商品の取引履歴、返済や延滞履歴の記録といった個人情報を登録・管理する組織です。日本の合法的な金融機関は、下記の3ついずれかの信用情報機関に加盟し、記録された信用情報を、お金を融資する際に閲覧し参考にしています。
(1)CIC
主にクレジットカード会社が加盟
(2)JICC
主に消費者金融
など貸金業者が加盟
(3)全国銀行個人信用情報センター(KSC)
主に銀行や信用金庫が加盟
金融機関によっては、2つの信用情報機関に加盟しているケースもあります。
信用情報機関には、お金を借りたことがある人やクレジットカードを利用している人は必ず登録されます。また、信用情報機関の記録は、記録されている本人であれば履歴の開示を請求できます。(手数料として500円~1000円程度かかります)
信用情報に事故情報が登録されると?
信用情報機関の記録に自己破産などの事故情報が載ってしまうことを俗に「ブラックリスト」と言い、事故情報が記録されている期間中は新たな借り入れや、クレジットカードの利用が難しくなります。
自己破産や個人再生、任意整理などの債務整理の情報や、借金返済の滞納などのネガティブな情報は「事故情報」と呼ばれます。
事故情報の登録期間は、5~10年と言われています(債権者となった金融機関の対応によっても期間は異なります)。金融機関は、新たな融資や利用限度額の増額等の申し込みがあった際必ず信用情報を確認するので、ここに事故情報が載っていると新規の借り入れは非常に難しくなります。クレジットカードについては、持っているカードの継続利用や更新ができなくなるだけでなく、別の会社で新たにカードを作ることも難しくなります。
一定の期間が過ぎると、事故情報は削除され、再びお金を借りたり、クレジットカードを作って利用したりすることが可能になります。
第三者も信用情報の照会は可能?
信用情報の開示は、本人または本人が許可した代理人のみが可能です。同居の家族や就職先の企業であっても、本人の承諾なく信用情報を開示することは出来ません。
信用情報は厳しく管理され、目的外使用は禁止されています。加盟企業であっても、「返済能力の調査」といった本来の目的以外で照会することはできないルールになっています。
信用情報を取り扱う企業の担当者にも守秘義務がありますので、そこから個人情報が漏洩したり、うわさが広まったりするおそれはありません。
所属弁護士会 東京弁護士会 No.44304
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