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ギャンブルが原因の借金の場合、自己破産による免責が認められない恐れがあります。賭け事や浪費が原因の借金は、破産法が定める「免責不許可事由」にあたるからです。しかし、現実には多くのケースで「裁量免責」により、借金の帳消しが認められています。「免責不許可事由」とは何か、どうすれば裁量免責により借金が帳消しになるのか、また自己破産が難しい場合の他の借金問題解決方法についてもご紹介します。

ギャンブルが原因の借金でも自己破産はできるのか？

ギャンブルが原因の借金の場合、自己破産の申立をしても、免責が認められない「免責不許可事由」にあたります。しかし、現実には裁判所が事情を調査のうえ、免責を認めるのが相当だと判断した場合は、一部の例外を除いて債務は免除されます。

生活に困り、真剣に自己破産を考えているときに、「ギャンブルや浪費が原因の借金の場合、自己破産は出来ない」という話を聞いたら、心当たりのある方はショックを受けることでしょう。

確かに、破産法には、ギャンブルや浪費が借金の理由の場合、自己破産しても借金を帳消しにできないというルールが規定されています。このルールを「免責不許可事由」と言います。

しかし、現実には、ギャンブルや浪費で借金を作っている人は多くいます。反省して真剣に人生をやり直したいと思っているのに自己破産が出来なければ、本当に困ってしまいますね。仕方なく、犯罪に手を染める人もいるでしょう。そうなれば、社会全体が困ってしまいます。

そのため、破産法は、免責不許可事由に当てはまる場合でも、裁判官が諸般の事情を考慮して免責が許可される場合があります。これを「裁量免責」と言います。

現実には、裁量免責により、ギャンブルや浪費により多額の借金を作った人も、ほとんどのケースで自己破産が認められています。

とはいえ、ギャンブルや浪費が原因の借金の場合、裁判官が詳しく事情を調査する必要があるため、病気や生活苦などが原因の借金よりも手続き費用や期間が長くかかることがあります。

免責不許可事由とは

免責不許可事由とは、破産法第252条に定められている、裁判所が借金をゼロにする手続きである「免責」を認めない事情のことです。

自己破産手続と一口に言っても、厳密には、以下の2つの手続きに分かれます。

(1)持っている財産を裁判所が換価して債権者に分配する…破産手続
(2)裁判所が借金をゼロにすることを認める…免責

(2)の免責が、非常に重要な制度で、「自己破産手続をとると借金が帳消しになる」というのは、免責が認められたことを意味します。

逆に言うと、「(1)の破産手続きをしても、(2)の免責が認められない」という状況があり得ます。そうなると、財産は処分・換価されるのに、借金はそのまま残るという大変困った状況になります。それでは自己破産をした意味がないので、破産手続きをお考えの方は、必ず専門家に相談しましょう。

免責不許可事由の代表例
免責不許可事由には11のケースがあります。代表例としては、以下のものがあります。

• ギャンブルや浪費が原因の借金（浪費又は賭博その他の射幸行為）
• 自己破産前に特定の債権者にだけ借金を返済する(偏頗弁済)
• 財産隠しや財産の破棄を行う（不当な破産財団の価値減少行為）
• 裁判所の調査に従わない、うそをつく（説明義務違反）

ギャンブルとは、競馬や競輪、パチンコなどの博打ほか、FX取引や金先物取引などの投資も含まれることがあります。もっとも、お小遣い程度のギャンブルや投資であれば、免責不許可事由には当たりません。収支のバランスから見て、借金の原因となるようなお金の使い過ぎがあった場合、免責不許可事由にあたるおそれがあります。

浪費とは、買い物のし過ぎのほか、キャバクラ・居酒屋等で過大な飲食、収入レベルに見合わないサービスの利用、風俗、エステなどの美容、サブスクの過剰な利用やオンラインゲームの高額課金などが挙げられます。

その他の免責不許可事由としては、自己破産手続に定められているルールを守らなかったり、不正行為や財産隠し、虚偽の内容の申し立てを行ったりした場合、悪質なものは免責不許可事由になります。

自己破産をすると一定額以上の財産が処分されてしまうので、どうしても手放したくない財産がある場合は、ごまかしたり隠したりしたくなることと思います。しかし、そうした不正行為が裁判所に発覚すれば、借金をゼロにすることが出来なくなるという重大な事態を招きます。

どうしても手放したくない財産がある場合は、自己破産以外の「個人再生」や「任意整理」と言った手続きで、借金の負担を軽くしつつ財産を守る方法もあります。継続した収入が必要など、いくつか条件がありますが、弁護士に相談してみてください。

免責不許可事由にあてはまった場合はどうなる？

免責不許可事由に当てはまった場合、そのままでは免責が認められず、借金を帳消しにすることが出来ません。しかし、裁判所が事情を詳しく調査する手続きを経ることによって、「裁量免責」により免責を受けられる可能性があります。

裁判所の自己破産手続の種類は、大きく「同時廃止」と「管財事件」とに分けられます。申立人がどちらかを選択するのではなく、裁判所が適切と思われる手続きを選びます。

(1) 同時廃止

同時廃止は、財産がなく、免責不許可事由もなく、単純な事例の場合に使われる手続きです。裁判所での手続き費用(予納金)が2万円程度と費用が安く、手続きにかかる期間も3～4か月と短いのが特徴です。

(2) 管財事件

免責不許可事由がある場合は、「管財事件」になります。管財事件となった場合は、裁判所によって「破産管財人」が選任されます。

破産管財人は、破産手続きのプロである弁護士が選ばれ、財産の管理・換価・債権者への配当や、免責不許可事由がある場合には、その経緯や事情について調査を行います。

つまり、この破産管財人や裁判官の調査や面談に真摯に協力し、反省の態度を示して、人生をやり直したいという気持ちを理解してもらえれば、裁量免責により借金帳消しが認められる可能性が高いのです。

管財事件は、破産管財人に報酬を支払わなくてはならないので、裁判所に納める予納金は20万円程度と高くなり、また手続き終了までの期間も半年から1年程度かかります。

ギャンブルが原因であっても自己破産を認めてもらうためにどうするべきか

ギャンブルが原因の借金の場合、当然ですが「ギャンブルをやめる」ことと、「裁判所の手続きに誠実に対応する」ことが大切です。

(1)ギャンブルをやめる

前述の通り、ギャンブルが原因の借金は法律上「免責不許可事由」にあてはまり、免責が認められないのが原則です。そこを、裁判所に事情を説明して、例外的に免責を認めてもらうのですから、「ギャンブルをやめて人生をもう一度やり直したい」という反省の態度と更生の意思が大切になります。

自己破産手続の最中はギャンブルを一切しないという態度を貫きましょう。「自己破産の手続きを弁護士に依頼した後はギャンブルを完全にやめた」と裁判所や破産管財人に伝えることで、心証が良くなり、裁量免責を得やすくなります。

その逆に、手続きの最中にギャンブルをして友人などから借金をした場合、発覚すれば裁判所の印象は非常に悪くなり、裁量免責が認められにくくなります。

ギャンブル依存症になっている場合、一人ではギャンブルをやめられない場合があります。家族に素直に事情を打ち明けてサポートしてもらったり、医療機関や支援団体のサポートを受けたりされることをお勧めします。

消費者庁：「ギャンブル等依存症でお困りの皆様へ（https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_012/）」

(2) 裁判所に誠実に対応する

管財事件となった場合、破産管財人に事情を調査されます。ギャンブルが原因の借金という後ろ暗さから、うそをつきたい、ごまかしたいという気持ちもあると思いますが、管財人に提出する書面や管財人の調査に対しては、正直に、誠実に対応するように心がけてください。

うそをついてしまうと、裁判官の印象が悪くなり、免責を認められない可能性が高くなります。手続き上不利な内容と思われても、素直にありのままを書き、話したほうが、結果として印象が良くなります。

また、破産管財人や裁判官は、面談の際「この人は免責を受ければ本当にやり直せるかどうか」を確認するために、時に厳しい言葉や態度で質問してくることがあります。苛立ったり落ち込んだりすることがあるかもしれません。しかし、免責を認めてもらうためには、厳しい言葉にも真摯に向かい合いましょう。

自己破産が難しい場合の債務整理の選択肢

ギャンブルが原因の借金で自己破産が難しそうな場合でも、借金の負担を減らすことができる法的な手続きは他にもあります。自己破産の他にも「任意整理」や「個人再生」と言った手続きがあり、まとめて「債務整理」と呼ばれています。

上記の通り、ギャンブルが原因の借金でも、多くのケースでは、自己破産が認められます。しかし、ギャンブルによる借金が高額の場合や、他にも免責不許可事由がある場合などは、他の債務整理も検討されたほうが良いでしょう。

例えば、以下のケースです。

• どうしても手放したくない財産がある
• 過去7年以内に自己破産をしている
• 警備員など、自己破産手続中に資格が制限される仕事をしている

以下、自己破産以外の債務整理を簡単にご説明します。

(1)任意整理

弁護士が債権者と私的に話し合って、利息や遅延損害金のカットや返済計画の見直しを交渉します。裁判所を通さないので煩雑な手続きがなく、希望があれば同居の家族にも内緒で借金負担を軽くすることが可能です。

原則として元本は減額されないので、比較的借金問題の程度が軽い人向けの手続きです。借金の元本を3～5年かけて分割返済できる人が適しています。

(2)個人再生

裁判所を通した手続きで、借金全額を5分の1程度(金額によっては10分の1)にまで大幅に圧縮できます。また、ローン付きの住宅や、どうしても手放したくない財産を守ることも可能です。手続き後は、認可された再生計画通りに3～5年かけて分割返済していきます。

自己破産と違い、借金の理由を原因に手続きが不許可になることはありませんし、手続き中に職業が資格制限されることもありません。

メリットの多い手続きに思えますが、債務整理の中でも書類作成などに特に手間と時間がかかることで知られています。手続き完了までに1年以上かかります。また、住宅ローンを除く借金が5、000万円以上ある場合は個人再生は出来ません。

【任意整理と個人再生の注意点】

任意再生も個人再生も、どちらの手続きも「将来にわたる継続的な収入」があり、減額後に残った借金を3～5年かけて返済する義務があります。従って、無収入の方はこれらの手続きは出来ず、自己破産をするしかありません。

収入があれば、アルバイトやパートなどの非正規雇用でも任意再生や個人再生が可能ですが、収入に対して借金額が高額すぎる場合は、自己破産をするしかないケースもあります。

ギャンブルが原因の借金で自己破産を成功させるポイント

ギャンブルが原因の借金で自己破産を検討する場合、まずは弁護士に相談しましょう。なぜなら、ギャンブルで自己破産をする場合は管財事件になる可能性が高いのですが、弁護士に依頼していると「少額管財」と言って、管財事件の中でも比較的費用が安く済む手続きになるからです。

事前に弁護士をつけないまま、ご自身で自己破産の申し立てを行い、管財事件になると、「通常管財」と言って、裁判所費用(予納金)が50万円以上かかる高額の手続きになってしまいます。弁護士に依頼したほうが、かえって全体の費用が安くなる可能性もあるのです。

また、自己破産に実績のある弁護士に頼むことで、免責不許可事由がある場合の手続きについてアドバイスを受けながら進めることができ、結果としてスムーズに免責を受けられる可能性が高まります。

「弁護士に依頼すると費用が高くつく」とお考えになると思いますが、法律事務所によっては弁護士費用は分割払いで対応してくれる事務所も多いので、無理なく自己破産費用を支払えるよう、相談に応じてくれます。

借金問題は時間がたつほどより深刻になっていきます。一人で抱え込まずに、まずは法律事務所にお問い合わせされることをお勧めします。近年では、借金問題の相談は多くの法律事務所が無料で受け付けています。

まとめ

ギャンブルが原因の借金でも、現実には裁量免責により沢山の人が自己破産に成功しています。弁護士にアドバイスを受けながら手続きを進めれば、免責を受けられる可能性が高まります。また、自己破産に向かないケースであっても、任意整理や個人再生と言ったほかの手続きをとることにより、借金の負担を軽減することが可能です。