破産法上、自己破産に回数制限はないので、2度目の自己破産も可能です。しかし、原則として1回目の免責許可決定の確定日から7年経過していることが必要です。また、管財事件という、時間や費用がかかる手続きになる可能性が高くなります。2回目の自己破産の注意点や、自己破産が難しい時の対処法について解説します。
目次
自己破産は2回目でも可能なのか?
破産法には自己破産に関して、回数制限の定めは存在しないので、制度上は何回でも自己破産が可能です。ただし、借金を帳消しにする免責が認められる条件は1回目より厳しくなりがちです。専門家によく相談して慎重に進める必要があります。
また、1回自己破産をすると、その後原則として7年間は自己破産ができないというルールがあります。しかし、前回の自己破産から7年経過していない、あるいは、免責が難しい状況であるといった理由があっても、自己破産以外の債務整理(任意整理、個人再生)が可能なケースがあります。
「ギャンブルで自己破産をして、以後はまじめに働いていたけれど、コロナ禍で勤め先が倒産してしまい、借金がかさんでしまった…」といった場合、まずは弁護士に相談されてみることをお勧めします。生活を立て直したいという強い気持ちがあれば、何かしらの解決策は見つかることでしょう。多くの法律事務所で、債務整理に関する相談を無料で受け付けています。
2回目の自己破産、1回目との違いは?
2回目の自己破産の場合、1回目と同じ理由で借金をしたのであれば、裁判所が免責許可決定を出す可能性は低いかもしれません。
免責とは
破産手続の開始決定があっただけでは、借金がただちに帳消しにはなりません。「免責」という手続きを踏むことで、初めて借金の返済を免除されます。そのため、免責許可決定を得ることこそ最も重要であるといえます。破産手続きを取った人のほとんどは免責を受けられますが、借金をした理由によっては免責が不許可になる可能性があります。
なぜ、免責の際は借金の理由が問われる?
自己破産は、借金問題で苦しんでいる人が人生を立て直すために設けられた制度です。自己破産で借金が免除されるということは、お金を貸した債権者にとっては、貸したお金が返ってこないという犠牲を払うことになります。
社会のルールとして、原則として借りたお金は返済する必要があり、自己破産はあくまで例外的な制度です。安易な気持ちで自己破産を何度も繰り返されては、社会の安定性を害し、お金を貸す債権者に不利益を与えます。
そのため、「免責不許可事由」という、免責を認めない理由が破産法252条に列挙されています。ギャンブルや投資、浪費といった理由で借金をした場合は、免責不許可事由に当てはまります。
もっとも、免責不許可事由に当てはまる場合でも、破産申立に至った経緯やその他諸々の事情を考慮して免責を許可することが相当であると裁判所が判断した場合、免責を許可することがあります。
2回目の自己破産は免責不許可事由になる?
破産法252条1項10号には、7年以内に免責を受けた場合には、免責不許可事由となり、原則として免責を認めないという規定があります。したがって、原則として自己破産はできません。
2度目の自己破産、免責されやすいケースと免責されにくいケース
例えば、「事業で失敗して多額の借金を作ってしまい、1回目の自己破産をして、会社員となったが、今度は病気で働けなくなってしまった」と言う場合は、最初の失敗と同じ理由で借金したわけではないので、2度目の免責も認められやすいでしょう。
しかし、「パチンコに夢中になって借金を作り、1回目の自己破産をして、その後今度は競馬に夢中になってまた借金をしてしまった」と言う場合は、どちらにしろギャンブルで借金をしたことにはかわりがないので、反省していないとみなされ、免責が認められにくくなります。
ギャンブルや投資、浪費のような理由でなくとも、たとえば「事業で失敗して借金を作り、自己破産後にまた懲りずに事業を立ち上げ、同じように失敗した」という場合も、経験から学ばずに同じことを繰り返す人として、裁判官の目は厳しくなります。
2回目の自己破産をする時の注意点
2回目の自己破産の場合は、「同時廃止」ではなく「管財事件」という手続きになって、費用や手間が余計にかかる可能性が高くなります。
同時廃止と管財事件の違い
自己破産には「同時廃止」と「管財事件(少額管財)」の2種類の手続きがあります。自己破産手続きをする本人が手続きの種類を決めるのではなく、裁判所が決定します。
同時廃止とは、一定価格以上の財産を持っていない人のための手続きで、破産手続開始決定と同時に破産手続廃止決定がなされます。3~4か月ほどで手続きが完了し、費用は弁護士費用を合わせて45万円ほどになります。
管財事件は、破産者に財産がある場合に、財産を処分・換価して債権者に配当し、その後、残った債務を免除する手続きです。そのため、財産を調査・管理する破産管財人という弁護士を裁判所が選任します。また、事業者や法人の代表であったり、免責不許可事由が存在するなど調査の必要がある場合でも管財人が選任されます。手続き期間は、一般的な少額管財においては、長い場合は半年以上かかることもあり、費用についても同時廃止の費用に加えて20万円程度多くかかります。
2回目の自己破産の場合、免責不許可事由に当たるケースでなくとも、裁判所が同じような理由で破産を繰り返したのかどうかを調べるために、管財事件とする可能性が高くなります。
そのため、同時廃止よりも手続きの期間や必要な費用が高くなってしまうことがあるのです。また、破産管財人の調査に全面的に協力する義務があり、2回目の破産の場合は、管財人から厳しい質問が出ることも覚悟しておきましょう。
2回目の自己破産ができない時の注意点と対処方法
1回目からまだ7年経過していない、2回目の借金の理由が免責不許可事由に絡んでいるなどで、自己破産が難しい場合でも、自己破産以外の債務整理で借金問題を解決できるケースがあります。ただし、滞納した借金の取り立てや督促を止める時間稼ぎのためだけに弁護士に頼んで受任通知を出してもらうと、かえって債権者に積極的に法的手段に出ることを促してしまうことがあり、注意が必要です。
自己破産などの債務整理を弁護士に正式に依頼すると債権者に受任通知が発送されます。これを受け取った債権者は、以降、債務者に催促や取り立てをしたり、直接の連絡を取ったりすることができなくなります。
思わぬ不利益を被らないよう、債務整理の経験が豊富な弁護士と事前によく相談しましょう。
前回の自己破産からの経過年数
「前回の自己破産から7年間経過する」とは、正確に言うと、「免責許可の決定が確定した日から7年間経過する」となっています。具体的には、許可決定日から約2週間後に官報掲載され、官報掲載から2週間経過して確定になります。つまり、裁判所から来た免責許可決定の通知書に記載された日付より1か月程度経つと確定します。
また、「7年が経過した」とする判断日は、2回目の自己破産の「免責許可の申立て」をした日となっています。免責許可の申立てと破産手続き開始の申立ては、通常は同時に行うので、自己破産を希望して各書類を裁判所に提出した日が判断日となります。
【事例】
例えば、裁判所から、2013年の7月1日の日付で免責許可決定の通知書が来た場合は、7年間のカウントのスタートは2013年8月1日ごろからです。つまり、2020年8月1日を過ぎれば2回目の自己破産ができることになります。
2020年7月20日に2回目の自己破産手続きの申し立てをしてしまうと、7年以内となるので、2020年8月以降に書類を提出したほうがよいことになります。
自己破産が難しい場合はどうしたら良い?
自己破産は難しいケースでも、任意整理や特定調停、個人再生といった、自己破産以外の債務整理で問題が解決できることがあります。また、前回の自己破産から7年以内でも、重い障害を負ったなど、裁判官が理由を聞いて「借金をするのも無理はない」と思えるような特段の事情があれば、裁判官の裁量により免責が認められる可能性もあります。諦めずに、まずは弁護士に相談してみましょう。
【自己破産以外の債務整理の種類】
①任意整理
弁護士に依頼して、金融機関や貸金業者などの債権者と私的な話し合いをして、借金の将来利息や遅延損害金のカット・返済計画のリスケジュールなどを行います。大幅な借金減額は望めませんが、借金問題が比較的軽く、借金の元本だけなら3年~5年の分割払いで返済可能であれば、任意整理で解決できる可能性があります。
任意整理は、私的な交渉ではあるものの、弁護士の受任通知には催促や取り立て・直接の連絡を禁止する効果が発生します。
受任通知による督促や直接の連絡禁止は、貸金業者や債権回収業者に関しては法律で定められたルールとなっています。それ以外の金融機関については、法律の定めはありませんが、通常は督促や直接の連絡を控えてくれます。
ただし、任意整理は私的な交渉なので、給料などの差し押さえをすでに受けている場合は、差し押さえを停止することはできません。
②個人再生
裁判所を通した手続きで、借金の総額を5分の1~10分の1程度に大幅に減額できます。継続的かつ安定した収入があり、借金の総額が5、000万円を超えない場合に手続きできます。自己破産のように借金の理由が問題になることもありません。
また、自己破産や任意整理と同様に、弁護士に依頼することで、債権者からの取り立てや直接の連絡をストップすることができます。
個人再生手続きの場合は差し押さえを停止できるので、すでに差し押さえを受けている人の債務整理に適しています。
困ったら弁護士に相談しよう
借金問題の多くは、1人で悩みを抱え込んで長期化すればするほど、深刻化していきます。まだ前回の自己破産から7年経っていなかったとしても、借金の問題に困ったら、弁護士や司法書士など、借金問題を得意とする法律の専門家に相談されることをお勧めします。
自己破産には、免責から7年経たないと原則として2回目の手続きができないというルールがありますが、他の債務整理にはそのような制限はありません。ましてや、専門家への相談は、いつでも行うことができ、同じ内容を複数の法律事務所に相談できます。債務整理を行う法律事務所の多くは無料相談を受け付けていますので、電話相談などで親切だったと感じた法律事務所に依頼されると良いでしょう。
所属弁護士会 東京弁護士会 No.44304
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