金融機関における,いわゆるブラックリストついてわかりやすく解説します。債務整理や借金の返済を遅延することで、信用情報機関に事故情報が記録されてしまうことを、俗にブラックリストに載ると言われています。ブラックリストの期間は契約期間中及び契約終了後5年以内とされています。登録内容が間違っていた場合は、信用情報機関に削除を依頼することが可能です。
ブラックリストとは何か?
お金の貸し借りや債務整理に関して、「ブラックリスト」とは、信用情報機関の支払いに関する情報として,延滞や破産などした場合,事故情報が記録されている状態のことを指し,実際にそのようなリストが存在するわけではありません。
目次
【信用情報機関とは】
個人のお金の貸し借りや、クレジットカードの利用状況、キャッシングの履歴などを記録しておくための情報機関です。銀行や、カード会社、消費者金融などの金融機関は、個人にお金を貸したり、クレジットカードを発行したりする際などに、信用情報機関の記録を参考にします。日本には以下の3つの信用情報機関が存在します。
指定信用情報機関(CIC)(https://www.cic.co.jp/)
主に信販会社やクレジットカード会社が加入しています。
日本信用情報機構(JICC)(https://www.jicc.co.jp/)
消費者金融とクレジットカード会社、銀行等が加入しています。
全国銀行個人信用情報センター(KSC)( https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/)
全国銀行協会が設置・運営しており、全国の銀行が加入しています。
日本の合法的な金融機関やカード会社は、上記の3つの信用情報機関いずれかに必ず加盟しています。
個人の借金やクレジットカード使用の履歴は、融資やサービスを提供した企業によって、加盟している信用情報機関に登録されます。そのため、一度でも企業から借金したり、クレジットカードを利用したことがある人は、だれもがこの信用情報機関に登録されています。
【事故情報とブラックリスト】
「返済の遅延」や「債務整理」など、融資やサービスを提供する企業にとってマイナスの情報を「事故情報」、あるいは「異動情報」や「延滞情報」「ネガティブ情報」などと呼んでいます。事故情報が信用情報機関の記録に掲載されることを、俗にブラックリストと呼んでいます。
事故情報はずっと記録されているわけではなく、一定期間を経過すると削除されます。
【社内ブラックリストとは】
信用情報機関の記録以外でも、「ブラックリスト」という言葉を使うことがあります。個々の金融機関やカード会社などは、顧客の情報を管理するリストを持っており、借金の滞納や債務整理などでこのリストに悪い情報が記録されてしまうことを「社内ブラックリスト」と呼ぶことがあります。
社内ブラックリストは部外者が閲覧できず、いつまで記録されているかは個々の企業によって違います。信用情報機関に記録されている信用情報と違って、その会社や、その企業のグループ会社のみが参照するため、社会的影響はあまりありません。A企業のブラックリストに載ったとしても、系列の違うB会社ではまったく問題なく借金ができます。
そもそもブラックリスト、というものは存在しない?
金融機関やその関係機関に「ブラックリスト」という名前のリストは存在しません。信用情報が記録される信用情報機関は、公に認められた機関です。ホームページや連絡先が明示されており、問い合わせれば自分の信用情報の記録をいつでも開示してくれます。
ブラックリストとは本来、「注意や警戒を要する人物を挙げたリスト」のことを指します。借金の延滞や債務整理を行った人は、新たにお金を融資するのに注意が必要であるとして、金融機関の側から見て「ブラックリスト」と俗称として呼ばれます。
信用情報機関の記録は、加盟している金融機関やカード会社ならばいつでもどんな目的でも見られるというわけではありません。「お金の融資」や「クレジットカードの発行、利用」「分割払い」といった、お金にかかわるサービスを提供する場合にのみ閲覧が可能です。
目的外に使われないよう、情報は厳しく管理されています。そのため、ブラックリストに載ったからといって会社をクビになったり、パスポートを取得できなくなったりすることはないので、安心してください。
どうしたらブラックリストになる?
任意整理などの債務整理を行ったり、借金の支払いを一定期間延滞したりすることにより、事故情報が記録されます。
【1】任意整理などの債務整理を行う
法律家や裁判所を通して行う借金問題解決法である「債務整理」を行うと、信用情報機関にその旨が記録されます。債務整理の手続きのうち、「任意整理」「個人再生」「自己破産」のいずれをとってもブラックリストになってしまいます。
任意整理などの債務整理を弁護士に依頼すると、弁護士が債務整理を受任した旨の受任通知が発送されます。すると、お金を貸していた金融機関は、次に借金返済などの動きがあった時に、債務整理があった事実を信用情報機関に記録します。合法的な金融機関や業者を相手にする限り、ブラックリストに載ることを回避することはできません。
また、専門家に頼らずに裁判所を通じて借金減額を交渉する「特定調停」の場合も、手続きを行うとブラックリストになってしまいます。
なお、例外的に、「過払い金請求」は債務整理の一種とされていますが、過払い金請求だけで他の借金整理をしなければ、ブラックリストにはなりません。過払い金を請求するのは裁判所で認められた正当な権利のため、個人の信用には関係がないからです。
【2】借金の支払いを一定期間滞納する
借金を決められた期日までに支払わない状態が2~3ヶ月続いた場合、「延滞」として事故情報が記録されます。
任意整理などの債務整理を行わなくとも、数か月にわたって借金を支払っていない場合は、自動的にブラックリストになってしまいますので、債務整理を行っても新たなデメリットは発生しません。そのため、借金を滞納している場合は、ためらわずにすぐに専門家に相談されたほうが良いでしょう。弁護士や司法書士などの専門家に任意整理などの債務整理を依頼すれば、支払いの督促もストップします。
ブラックリストになると掲載される情報は?
信用情報機関には、その人個人の「債務整理」や「延滞」といった事実が端的に記録されます。債務整理や延滞をした理由や、その人以外の情報が記録されることはありません。
債務整理に至った理由などの付属情報は書かれませんので、ギャンブルや風俗、買い物のし過ぎなどの理由であっても、世間に知られることはありません。
家族や配偶者などの信用情報が紐付けて記載されることもないので、同居の家族であっても、債務整理を行った人以外の家族が、借金をしたり、クレジットカードを作ったりする分には何の問題もありません。
ブラックリストの効果は
ブラックリストの効果としては、事故情報が記録されている期間中は、新たなローンやキャッシングの際、審査に通りにくくなり、借金が難しくなることです。そのほかにも日常生活に影響するデメリットがありますので、債務整理前に理解し、対策しておきましょう。
クレジットカードの作成・利用ができない
クレジットカード会社はカードの作成や更新の際に、信用情報機関の与信情報を参照します。その際事故情報が載っていると審査に落ちてしまいます。現在使っているカードについても、いずれ使えなくなります。使用不能になるタイミングは、会社によって違いますが、遅くとも更新の際には与信情報のチェックがあります。最長でも、更新期限ごろまでには使えなくなると思っておきましょう。
家賃や公共料金の支払い、必要な日用品の定期購入などをクレジットカードで行っていた場合は、他の決済手段に切り替える必要があります。
携帯電話やスマーフォンなどの分割払いができない
分割払いの契約も借金の一種とされているので、ブラックリストになっていると、携帯電話やスマートフォンの購入時に分割払いができなくなります。
携帯やスマホが壊れてしまった場合は、一括払いを検討するか、ディスカウント品や中古など、なるべく安い製品をネットで探すとよいでしょう。多くの携帯電話会社では、店舗よりもネットのほうが安い値段で携帯やスマホを販売しています。少し古い機種になると新品のスマホでも1万円程度の価格で入手できることがあります。
まれに賃貸住宅に契約できないケースがある
新たに賃貸物件を借りて契約する場合、ほとんどのケースではブラックリストに関係なく契約ができます。しかし、家賃の支払い方法がクレジットカードのみの場合や、支払いに関し信販会社を介する場合は、信用情報の審査があるため、契約はできません。
また、物件によっては家賃保証会社との契約を義務付けていることがあります。家賃保証会社が貸金業者等の場合、入居審査の際ブラックリストを参照されて、審査に落ちるケースがあります。ブラックリスト期間中に賃貸住宅と契約する際は、不動産会社に、事前に家賃保証会社がどこかを尋ねるとよいでしょう。
債務整理を機会に、借金に頼った生活スタイルや消費の在り方を見直し、人生が明るくなったと感じる人も少なくありません。デメリットを過度に恐れすぎずに、借金問題を解決されることをお勧めします。
いつまでブラックリストになるのか?
借金の延滞や債務整理を行った場合のブラックリスト期間は、概ね,契約期間中及び契約終了後5年以内とされています。具体的には、どの種類の債務整理手続きを取ったか、どの信用情報機関に登録されたか、といった点によって記録期間が異なってきす。
ブラックリストから事故情報を消す方法は?
信用情報機関に自分の信用情報を問い合わせた際、登録内容が間違っているのであれば、削除を求めることができます。しかし、事実として債務整理や返済の遅延を行っていた場合、ブラックリストから事故情報を消すことはできません。残念ながら、一定期間が過ぎて登録情報が消えるまで待つしかありません。
信用情報機関に問い合わせれば、ブラックリストになっているかどうかがいつでも確認できます。債務整理から5~10年経過したら、信用情報機関の記録から事故情報が消えているかをチェックしましょう。事故情報が残っている状態でローンやクレジットカードの申し込みをしてしまうと、審査に落ちてしまいます。
【信用情報機関に借金の情報が全くない場合】
信用情報機関の情報が真っ白な場合、住宅ローンなど大きな借金を行う場合は、審査の際「この年齢で借金の履歴がまったくないとはおかしい。過去に債務整理をしているのではないか」と、金融機関に怪しまれるケースがあります。
債務整理をして5~10年経ち、ブラックリストから脱した後に大きなローンを組む場合は、いきなり本命のローンの審査に挑むのではなく、最初は携帯やスマートフォンの分割払いなど、審査の敷居が低い借金から初めて、あらかじめ信用情報機関の記録に健全な借金返済の記録を残しておくとよいでしょう。
所属弁護士会 東京弁護士会 No.44304
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