自己破産手続をとる際の借金額の目安について解説します。自己破産可能な借金の金額について明確な基準はありません。一般的な話として100~300万円程度の借金額で自己破産する人が多いようです。自分自身が破産手続きを希望しても、裁判所は様々な事情を考慮して支払い不能かどうか判断します。少額の自己破産の場合、任意整理が適している可能性もあります。
自己破産は借金がいくらくらいからできるのか?
自己破産ができる借金の金額は、特に法律上定めはなく、100万円以下の借金で自己破産をする人もいれば、5,000万円を超える借金をしていても自己破産が出来ます。
一般的には、100~300万円ほどの借金で自己破産する人が多いようです。病気で働けない場合など、収入がないケースであれば、借金の金額にかかわらず、自己破産が必要な場合があります。
自己破産をするためには、裁判所に、自己破産ができる条件に当てはまっていると認められることが必要です。逆に、裁判所が認めてくれれば、借金の多寡に寄らず、個人の状況に応じて自己破産が可能になります。
法律には最低金額の定めはありませんが、ご自身の状況が、自己破産手続をすべき場合かどうかは、一度法律事務所の無料法律相談に問い合わせをされることをお勧めします。場合によっては、自己破産よりも、任意整理や個人再生と言ったほかの借金整理方法のほうが適している可能性があります。
自己破産は借金が帳消しになる強力な手続きですが、半面、一定額以上の財産が裁判所によって換価処分されてしまうなどのデメリットもあります。事前に法律のプロのアドバイスを聞くことで、よりご自身に最適な手続きが見つかることでしょう。
自己破産が認められるには
裁判所に自己破産が認められるためには、(1)借金が支払不能であること、(2)免責不許可事由がないこと、(3)非免責債権でないこと、の3つが必要です。
目次
(1)借金が支払不能であること
借金が支払不能であるかは、本人の収入や生活の状況、支出や特殊な事情など、様々な事情を勘案して裁判所が判断します。数十万円程度の借金で自己破産が認められる人もいれば、高収入で、多額の支出が必要な事情がない人の場合、相応に高額な借金でなければ自己破産が認められない場合もあります。
「友人が100万円の借金で自己破産した」と聞いても、収入・支出の状況によっては、ご自身は自己破産が認められない可能性があるので注意しましょう。
(2)免責不許可事由がないこと
免責不許可事由とは、自己破産の際に、免責が認められないとされている事情のことで、破産法252条1項に定めがあります。
「免責」とは、自己破産手続のうち最も重要な制度で、裁判官が免責を許可することにより、借金が帳消しになります。自己破産手続をしても、免責が認められなければ借金が残ってしまい、自己破産をした意味がありません。
免責不許可事由でもっとも多いのが、「ギャンブルや浪費が原因の借金」です。ギャンブルや浪費が原因の借金の場合免責不許可事由とされています。
また、自己破産手続の直前に特定の債権者にだけ借金を返済する偏頗(へんぱ)弁済や、財産隠しをしたり、裁判所にうそを書いた書類を提出したりする行為も免責不許可事由に当てはまります。
免責不許可事由がある場合であっても、裁判官が裁量により免責を許可することができます。この免責を「裁量免責」と言い、ギャンブルや浪費が原因の借金の場合は、現実にはほとんどのケースで、裁量免責により借金が帳消しになっています。
自己破産手続の最中に免責不許可事由に当てはまる行為がないよう、手続きは正直に、誠実に行うようにしましょう。
(3)非免責債権でないこと
非免責債権とは、税金や社会保険料に代表される、自己破産しても支払い義務が無くならない債務のことです。債務の大半が税金の未納だという場合は、自己破産をしても意味がないため、別の方法を検討する必要があります。
なお、税金を支払うことは国民の義務であるため、他の借金等に優先して支払っても自己破産手続上問題にはなりません。そのため、資金繰りに苦しい場合は、税金を他の借金に優先して支払うことをお勧めします。
少額自己破産時の注意点
数十万円程度の少額の借金で自己破産をする場合は、自己破産に必要な手続き費用を計算し、借金額よりも手続き費用のほうが高額になる場合は、別の解決を選択したほうが良いかもしれません。
自己破産に必要な手続き費用
裁判所に納める手続き費用(予納金)が2~50万円程度、これに加え、弁護士に依頼した場合は別途30万~50万円程度かかります。
・裁判所費用(予納金)
自己破産の際に裁判所に支払う費用を予納金と言います。自己破産には3種類の手続きがあり、自己破産手続きを申し立てた人の個別の事情に応じて裁判所が手続きの種類を選びます。どの手続きになるかによって裁判所に納める費用は大きく変わります。
- 【同時廃止】財産がなく、かつ、免責不許可事由もなく、比較的単純な場合…2万円程度
- 【少額管財】財産があるか、または免責不許可事由があるなど、裁判所が詳しく調査する必要があると判断されたケースで、事前に弁護士を依頼している場合…2~30万程度
- 【管財事件】2に当てはまるケースで、事前に弁護士に依頼していなかった場合…50万円以上
・弁護士費用
自己破産の弁護士費用は、個別の事情にもよりますが一般的には30万円~50万円程度かかるとされています。
自己破産を検討している方には大きな額ですが、手続きの際にはできれば弁護士に依頼されたほうが良いでしょう。
というのも、自己破産手続自体は本人一人でも可能な手続きですが、申立に必要な書類は多岐にわたり、管財人との面接や追加の書類の提出など一般の人にとっては慣れない作業が多くあります。労力や心理的不安を考慮するとご自身で申立を行うのはお勧めできません。
自己破産手続に失敗して免責が許可されなくなるケースは少ないですが、法律に詳しくない人が本やネット記事を読んだだけで手続きにトライすると、うまくいかない場合があります。
また、比較的複雑な事案の場合、弁護士に頼んだほうがかえって全体の手続き費用が安くなる場合もあります。
弁護士費用は、法律事務所によっては分割払いに応じてくれたりする場合もあります。法律事務所の無料相談を利用して、ご自身の場合、およそどれくらいの手続き費用が掛かるのか、事前に問い合わせされるとよいでしょう。
自己破産が認められる支払不能とは
支払不能について破産法2条11項では次のように定義されています。
「支払不能とは、債務者が支払能力を欠くためにその債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」をいいます。
毎月の収入から必要な生活費を差し引いた額が返済可能額になりますが、しかし、返済可能額より借金の返済額のほうが大きく上回れば支払不能といえるでしょう。
例えば、病気やけがで療養が必要になり、収入が落ち込んだ場合、一時的なものであって、回復すれば復帰できるケースでは、支払不能と認められない場合があります。すぐには回復が見込めず復帰に時間がかかる場合、あるいは体力が必要な仕事のため、退職せざるを得なくなった場合などには、支払不能と認められやすくなります。
自己破産以外の任意整理や個人再生が適している可能性もある
借金の金額が少額で、裁判所に支払不能と認めてもらえない可能性がある場合、自己破産以外の他の借金問題解決方法を考える必要があります。法的な借金問題の解決方法は「債務整理」と呼ばれており、自己破産よりリスクやデメリットが少ない手続きもあるため、他の選択肢も検討してみてください。
(1)任意整理
債務整理の中でも比較的少額の借金に向いた手続きです。弁護士が貸金業者等の金融機関と私的に交渉して、利息や遅延損害金のカット、返済計画の練り直しなどを行います。裁判所を通さないので手続きとしては最も簡単で、社会的なデメリットも少なく、家族にもバレにくい方法です。
任意整理でカットできる借金は、原則として利息と遅延損害金のみで、借りた元本は返済しなくてはなりません。そのため、任意整理に向いているケースとしては、継続的・安定的な収入があり、借金の元本が分割払いで3~5年程度で支払い可能なことが目安になります。
継続的・安定的な収入があり、そのうち一定額を借金の返済に回すことが可能であれば、パートやアルバイトと言った非正規雇用でも任意整理を行うことができます。
また、整理の対象が選べるため、「友人・知人や勤め先からの借金は全額返済したい」と言った場合に、整理の対象を金融機関などの特定の債権者だけに絞ることも可能です。
(2)個人再生
個人再生とは、裁判所を通した手続きで、元本を含む借金全額を5分の1程度(最大10分の1)にまで大幅に圧縮できます。また、「住宅ローン特則」という制度を利用することにより、住宅ローン支払い中のマイホームに住み続けながら借金の圧縮を行うことができます。
また、自己破産の場合は、一定額以上の財産は裁判所により換価処分されますが、個人再生の場合はこうした財産処分がないことも特徴です。特に守りたい財産がある場合などは個人再生を利用することで手放さずに済みます。
また、自己破産手続中は、警備員や生命保険の外交員など一定の職業につくことが出来なくなりますが、個人再生にはこうした職業制限はありません。
個人再生は債務整理のなかでも続きに手間暇がかかる方法とされ、特に弁護士の手助けが必要です。また、期間も1年以上かかる場合があります。
(3)その他の方法
それ以外の方法としては、友人や親族等からお金を借りる、処分可能な財産がないか今一度検討し売却するなどの方法があります。
債務整理は、任意整理・個人再生・自己破産共に、一度手続きをすると信用情報機関に事故情報として登録され、5~10年程度新たな借金やクレジットカードの利用が出来なくなるというデメリットがあります(俗にいうブラックリスト)。それがどうしても嫌だという場合は、知り合いからの借金や財産処分の再検討を行ってください。
しかし、友人や親族等からの借金は、返済が出来ないと友情や親族との付き合いにひびを入れてしまうものです。必ず返せる自信がない限りは、債務整理などの法的手続きによって借金の減免を図るほうが、大切な人とのご縁を失わずに済むでしょう。
自己破産は悪いことばかりではなく、破産手続を自らとることによって、自分の経済行動に問題点がなかったか、もう一度過去の自分の行動を振り返って、将来の反省点とすることができます。その結果、過去から学んで、より慎重で計画的な人生を送れるようになる人も多くいます。
債務整理によるブラックリスト入りは、長くても10年経てば記録が消され、以前のように借金やクレジットカードの利用ができるようになります。また、信用情報機関にある個人情報は厳格に管理され、目的外の利用は禁止されています。信用情報機関は請求すれば履歴の開示にも応じてくれます(手数料が1,000円ほどかかります)。
ブラックリスト入りすると不便なことはありますが、借り入れに頼らない生活をする習慣がつきます。自己破産などの債務整理を過度に恐れる必要はありません。借金が苦しいと感じたら、まずは専門家に相談されることをお勧めします。
所属弁護士会 東京弁護士会 No.44304
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