総量規制により、貸金業者からの借入には年収による制限が導入されました。
何らかの収入源を持っている人でなければ借金が難しくなっていますが、近年の債務整理においては、どんな職業の人が多いのでしょうか?
目次
自己破産も個人再生も、第1位は「正社員」
自己破産や個人再生などの債務整理を行う人というと、「生活が苦しくて、お金に困って行う」というイメージがあります。実際に債務整理の理由としては「生活苦・低所得」が第1位なのですが、債務整理を行った人の職業で、もっとも多かったのは「正社員」でした。
正社員というと、非正規雇用よりも安定していて給料が良いというイメージがありますので、少し意外ですね。もっとも、自己破産の場合、第1位の正社員(27.34%)と第2位の正社員以外(26.69%)の差は1%未満とごくわずかです。
個人再生の場合は、制度の趣旨として、「継続的に又は反復した収入」があると認められる必要があることから、正社員の割合が73.73%と圧倒的に多く、正社員以外の割合は11.72%と少なくなっています。
「正社員」と「非正規雇用」の違いとは
実は、法律上の「正社員」の定義について、明確な定めがあるわけではありません。
一般的には、契約期間の定めの有無、フルタイム勤務かどうかといった要素の他に、昇給やボーナス・退職金があるか、労働保険(労災保険と雇用保険)・社会保険(健康保険と厚生年金)といった法定福利の加入の有無などで、正社員と非正規雇用を区別しています。しかし、最終的には「正社員という肩書きを名乗ることを雇用先と本人が同意すれば正社員」ということになります。
肩書きは正社員でも、実質は非正規雇用と変わらない労働条件や環境で働いている、いわゆる「名ばかり正社員」も存在します。最低賃金ぎりぎりの給料であっても、「正社員」の肩書きをつけることは違法ではないためです。そのため、「正社員だから高給」というわけでもないのが現実です。
自営業や自由業の人の割合は?
自営・自由業の債務者の割合は、自己破産で5.16%、個人再生で12.01%と少なくなっています。これは、日本における就労人口のうち、自営業の割合が年々低下していることと関係していると考えられます。
総務省統計局の2016年(平成28年)の労働力調査によれば、自営業主・家族従業者は、全就業者のうち11%となっています。
出典・http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index1.pdf
インターネットの発達やパソコンの軽量化、スマートフォンやモバイル機器の普及により、会社組織に縛られず活動するフリーランスにとっては、働きやすい環境になったといわれています。しかし、日本全体で見ると、高齢化や後継者不足により、個人事業主は減少を続けており、今後も減っていくと予想されています。
もちろん、個人事業主であっても、自己破産や個人再生、任意整理といった債務整理手続きが可能です。
無職の人や生活保護を受けている人、専業主婦などの割合は?
自己破産で三番目に多いのが「無職」(20.00%)です。自己破産は、収入がなくても可能なただ一つの債務整理方法なので、病気など、何らかの事情で働けなくなってしまった人でも手続きをすることができます。破産をすると、マイホームなどの財産は手放さざるを得ませんが、借金を帳消しにできるのは、収入のない人にとって大きなメリットです。
生活保護受給者(11.13%)や年金生活者(7.26%)も一定数の人が破産をしています。主婦・内職の比率が1.13%と少ないのは、総量規制の導入も影響しているのでしょう。
一方、個人再生の場合は、何らかの形で収入がないと手続きができないので、生活保護受給者や主婦・内職の割合は0%となっています。無職(0.14%)や年金生活者(1.84%)もゼロではないものの、かなり少ない割合となっています。
それ以外の職業や、公務員で債務整理する人はいるの?
「その他・記入漏れ」は自己破産で1.29%、個人再生で0.56%となっており、公務員は「その他」に含まれます。割合としてはごく少数ですが、いないわけではありません。
こうした職業であっても、自己破産や個人再生、任意整理などの債務整理は可能です。
このように、債務整理手続きをとる人の職業は様々です。個別具体的なケースによって、その人に最適な債務整理方法も異なってきますので、借金問題のプロである弁護士に早めに相談しましょう。
所属弁護士会 東京弁護士会 No.44304
北海道から沖縄まで全国とこでも飛び回り、お悩みを解決します。
モットーは依頼人の悩みを解決するだけでは無く、再スタートまでのトータルケアを事務所一丸になってサポートします。