借金は社会生活を営む上でとても身近な行為です。
また、借金問題で悩む人も少なくありません。
借金をする人や、多重債務者、債務整理をする人の推移は、近年、どう変化しているのでしょうか?
金融庁や裁判所司法統計の調査からひもといていきましょう。
個人の借金額は増えている?減っている?
金融庁(http://www.fsa.go.jp/)が公表している「貸金業関係資料(http://www.fsa.go.jp/status/kasikin/)」によれば、平成28年(2016年)3月末の時点での消費者向けの貸し付け残高は、6兆627億円になります。つまり、個人の借金をすべて合計すると6兆627億円になるということですね。
6兆円というととんでもない金額に思えますが、実はこの額はだいぶ少なくなっているのです。以下の表をご覧ください。
出典・http://www.fsa.go.jp/status/kasikin/20160930/08.pdf
平成18年(2006年)3月末には、借金の総額は20兆9,005億円にものぼっていました。しかし、このころをピークに借金総額は減り始め、現在は3分の1以下にまで減っています。
なぜ、個人の借金総額が減少したの?
平成18年(2006年)というと、最高裁判所が、いわゆるグレーゾーン金利について、無効との判決を下した年です。
グレーゾーン金利というのは、簡単に言うと、「利息制限法に定められた上限金利より高い違法な金利だが、かつての出資法の上限金利の範囲内である金利」のことです。この判決が出るまでは、多くの貸金業者がこのグレーゾーン金利でお金を貸し付けていました。
判決をきっかけに、平成19年(2007年)ごろから各消費者金融が、金利を利息制限法の範囲に引き下げるようになり、また、払いすぎた利息を取り戻すための過払金請求が相次ぎました。この判決後、10年間の合計で、貸金業者が過払い利息返還請求をされたことによりかかった費用は約7兆円にのぼると発表されています。
(「日本貸金業協会(http://www.j-fsa.or.jp/index.php)」の調査)
グレーゾーン金利は平成22年(2010年)6月に、法律的にも完全に廃止されました。
また、「総量規制」という、原則として借入総額が年収等の3分の1までに制限される仕組みが平成22年(2010年)から導入されたことも、減少の理由と考えられます。
多重債務者の推移は?
借金の総額が減ったということは、複数の貸金業者から借金をして返済に困っている人、いわゆる多重債務者は減っているのでしょうか?
出典・http://www.kantei.go.jp/jp/singi/saimu/kondankai/dai05/siryou1.pdf
平成19年(2007年)には、5件以上の貸金業者から無担保の貸し付けを受けていた人数は171万人、1人あたりの残高は116.9万円にもなっていましたが、平成27年(2015年)には14万人と、10分の1以下にまで減少しています。
もっとも、5件ではなく、3件以上の貸金業者からの無担保貸し付けとなりますと、依然として140万人もの人が、複数の貸金業者からお金を借りていることになります。また、一人当たりの残高も52.4万円と、決して少ない額ではありません。
債務整理した人の件数はどれくらい?
続いて、借金が苦しくなって、実際に債務整理をした人の推移を見ていきましょう。
債務整理には、「自己破産」「個人再生」「特定調停」「任意整理」「過払い金請求」の5つがあります。このうち任意整理と過払い金請求に関しては、正確な件数のデータはありません。また、特定調停は利用する人がとても少ない手続きのため、ここでは省略します。
一定数の利用者があり、裁判所による正確な統計がある「自己破産」と「個人再生」について、平成18年(2006年)以降の推移はこのようになっています。
2006年時点では、自己破産の件数は17万4,861件、個人再生の件数は2万2,379件と、20万人近い人が裁判所を通しての債務整理の手続きに踏み切っていたことが分かります。
国民の借金総額が減るにしたがって、債務整理の手続きをとる人も減っていき、2015年の段階では自己破産を行った人は7万1,533件、個人再生の件数は7,798件と、10年前の半分以下に減少しています。
このように、借金に困って債務整理する人は減少しているものの、依然として約8万人が裁判所で債務整理を行っています。借金問題は、決して特殊な人だけの問題ではなく、誰の身にも起こりうる問題なのです。
所属弁護士会 東京弁護士会 No.44304
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